メルセデス・ベンツSクラス 詳細データテスト 最良ではない快適性 走りはスポーティではないが上々

公開 : 2022.04.16 20:25

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

新型Sクラスの静粛性はどの程度か。その方面で最高峰にあるロールス・ロイス・ゴーストと比べると、立派に善戦しているが、脅威になるほどではない。アイドリングの静けさでこそ勝っているが、48km/hでは3dBA、高速道路巡航時では4dBAの差をつけられている。

つまり、S580eのキャビンは並外れて静かで穏やかな空間ではあるものの、クラストップの洗練性にはまだ届かない。6気筒エンジンの性質についていえば、控えめで貴族的というより、スムースで朗々たるサウンドを響かせる。言い換えるなら、ほどよく上質な部類に入るが、昔ながらの洗練性に照らして頂点に立つといえるほどではない、ということだ。

洗練性は7シリーズやA8の上を行くが、ゴーストに比べれば見劣りするし、乗り心地は先代ほどソフトではない。とはいえ、自らドライバーズシートに収まるとしたら、このSクラスほど付き合いやすい高級サルーンはまずない。
洗練性は7シリーズやA8の上を行くが、ゴーストに比べれば見劣りするし、乗り心地は先代ほどソフトではない。とはいえ、自らドライバーズシートに収まるとしたら、このSクラスほど付き合いやすい高級サルーンはまずない。    MAX EDLESTON

同じことは、乗り心地にも当てはまるといっていいだろう。予想どおり、エアスプリングと長大なホイールベースによって、ゆったりとした走りはすばらしくなめらかだ。しかし、荒れた舗装からの突き上げはもっと抑えられていて然るべきだ。先代Sクラスの登場時には、スリッパを履いたようにソフトな乗り心地に驚かされたが、この新型はそこまでではなかった感じだ。

にもかかわらず、7シリーズより洗練された乗り心地で、A8よりも一枚上手だ。もしもE−アクティブボディコントロールが採用されれば、その水準はかなり高まるだろう。いっぽう、ホイールはテスト車が履く20インチのほか、オプションで21インチも設定されるが、それを選ぶのはやめておいたほうがいい。

マテリアル的な心地よさは、このクルマで一番の強みだろう。Sクラスの深いバケット風シートと、ゴーストのもっと立派だが飾り気のないシート、一日中座っているならどちらを選ぶかと問われたら、われわれは迷わずメルセデスのほうを取る。

比較すればSクラスのほうが目立たず、操縦系は見慣れていて、全方位の視認性が優れているということも、落ち着いて乗っていられる要因だ。間違いなく、ロングホイールベースのリムジン的なモデルで、これほど運転しやすいものはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事