メルセデス・ベンツSクラス 詳細データテスト 最良ではない快適性 走りはスポーティではないが上々

公開 : 2022.04.16 20:25  更新 : 2022.04.26 01:45

新型SクラスのPHEVをテスト。高級車にふさわしく、パワートレインとブレーキはひたすらなめらかで、ハンドリングは重く長い車体を忘れる整然としたもの。ただし、静粛性や乗り心地は優秀ながら、改善の余地もありました。

はじめに

1972年にメルセデス・ベンツがはじめてSクラスの名を用いたモデルから数えて、この自称・世界最高のクルマは7代目となった。当然ながら、歴代モデルが登場時にそうだったように、これは最先端のメルセデスだ。

いや、はたしてそうだろうか。というのも、今回ははじめて、このシュツットガルトのフラッグシップサルーンに、身内のライバルがいるからだ。もちろんEQSのことだ。Sクラスにできることはすべてできるように造られ、さらに完全電動化されたモデルである。

テスト車:メルセデス・ベンツS580e L AMGライン・プレミアムプラス・エグゼクティブ
テスト車:メルセデス・ベンツS580e L AMGライン・プレミアムプラス・エグゼクティブ    MAX EDLESTON

これは政権交代のときなのだろうか。おそらくはそうだろう。また、それだけで記事を1本作る価値のある話だ。

それまでは、開発主任のユルゲン・ワイシンガーが「投資の点では、これに迫るモデルはない」というこのクルマが、まだトップの座を譲らないものとしておこう。ラグジュアリーさや静粛性はいまだプライオリティの最上位にあるが、デジタル化とコネクティビティも、EQSには及ばないまでも、きわめて僅差だ。

新型Sクラスは、ドライバーの操作なく完全自動運転できるポテンシャルを持った初のメルセデスだ。たとえパーキングのような閉鎖空間に限られるとはいえ。OTAでのソフトのアップデートも可能で、メルセデス指定のアイテムを家に備えていれば、MBUXスマートホームを介して、自宅の室温や照明、ブラインドの開き具合まで車内から確認し、音声認識で操作することもできる。

便利かと問われれば、多分そうとはいえない。しかし、メルセデスがSクラスに技術的に新たな道筋をつけようとしていることはよくわかる。

どれもすばらしいことに思えるが、先代にあった走りの完全な洗練性が受け継がれていなければ、それも無意味だ。目的地に着いたとき、乗り込んだときよりも休まり、むしろ元気なれる、クセになりそうなクルマでなくてはいけない。

ロールス・ロイスよりは安い価格で買えるうちで最高のサルーンというポジションを、今回も主張する必要があるのだ。それも、どんなに地味なロールスよりも人目につかないという利点を備えた。

それらをすべてふまえて、W223型Sクラスのロードテストを進めていこう。はたして、新たな高みに達したのか、それとも、水準が落ちてしまっているのか、確認してみようではないか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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