【詳細データテスト】BMW2シリーズ FRの魅力は健在 220iは日常使いに おすすめは230i

公開 : 2022.06.18 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

220iは、電光石火といった形容が似合うクルマでもない。このシャシー全般において、重要な点は後輪駆動ベースゆえのシャシーバランスだ。

M135i xドライブは同じような価格で、どちらを選ぶか迷うところかもしれない。しかし、コーナリングをより楽しめるのは220iクーペのほうだろう。少なくともそこに関してはそれでいいと思う。つまり、2シリーズクーペが提供すべき価値は、ハンドリングにこそあるのだ。

低いドライビングポジションと重心高、そして後輪駆動の特性が、コーナリングをおもしろくしてくれる。しかし、このクルマの123ps/tという比出力は、それ以上あってもいいと思わせるものだ。
低いドライビングポジションと重心高、そして後輪駆動の特性が、コーナリングをおもしろくしてくれる。しかし、このクルマの123ps/tという比出力は、それ以上あってもいいと思わせるものだ。    LUC LACEY

全体的には、それは叶えられている。ただし、ハードコアなスポーツカーのレベルを期待しなければ。4WDのM135iなら、ウェットコンディションでのトラクションはもっと上をいくし、マツダロードスターならもっと楽しめる。220iの強みはバランスだ。

えてして控えめなエンジンのBMWは、後輪駆動を堪能するにはパワー不足だといわれがちだ。ところが、それがこの220iにはあてはまらない。それは公道上でオーバーステアに持ち込みたがるからではなく、ちょっとハードに走らせたとき、コーナーでアウトへ膨らまず後ろから押し出されることで、それを感じられるからだ。

もちろん、ウェット路面なら状況は劇的に変わる。220iのパワーでも、リアのピレリはすぐにホイールスピンするようになる。

低い重心とオプションのウルトラローポジションシートも、曲がりくねった道を自然に流れるような2シリーズの走りに寄与する。そう、動かさなければいけない重量はかなりあるが、背の高いクルマよりは積極的に動く。

ステアリングのロックトウロックは2.2回転で、シャシーの安定性を損なうナーバスさが出てしまいそうだが、BMWは可変レシオのラックを効果的に使っている。ペースは自然に感じられ、クイックレシオだと思わされるのは駐車の時くらいだ。開けた路上であれば、どれくらい切ればよかったか、切ってから後悔するようなことにはならない。

そうは言っても、フィードバックは感じられない。最新のステアリングラックの水準からすれば、安心感のある手応えがあり、フロントタイヤの荷重をそれなりに感じ取れるほうだが、ほかを探せばもっとインフォメーションを伝えてくれる操舵系はある。スポーツモードでは手応えが不自然に重くなるが、フィードバックが増えるわけではない。

真正MモデルではないBMWにありがちなのだが、この2シリーズにも制約はある。そこそこ速めのコーナーでは、フロントアクスルがゴムブッシュによって上下動の収束に間を必要としているように感じられる。グリップはしてくれるのだが、コンフィデンスが5%ほど目減りする感じだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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