【詳細データテスト】BMW2シリーズ FRの魅力は健在 220iは日常使いに おすすめは230i

公開 : 2022.06.18 20:25

走り ★★★★★★★☆☆☆

184psで1.5tの220iは、取り立てて速いクルマではない。0-97km/h加速は7.3秒で、いまやBセグメントのハッチバックでもこれより1秒は速い。

この発進加速タイムは、トヨタの先代86と同程度だ。とはいえ、トヨタと違ってBMWは、ターボエンジンを採用している。30.6kg-mのトルクは、86の2.0Lフラット4より9kg-mも太く、中間加速にはその差がはっきり表れている。

トルコンとは思えないレスポンスのATは、適切なモードを選べば変速タイミングも絶妙。ただし、ブレーキはどのモードを選んでも、スムースなコントロールができない。
トルコンとは思えないレスポンスのATは、適切なモードを選べば変速タイミングも絶妙。ただし、ブレーキはどのモードを選んでも、スムースなコントロールができない。    LUC LACEY

たとえば、4速・48−113km/hは、ギア比がややロングであるにもかかわらず、先代86より3.4秒速い。それはすなわち、路上での220iは、ゼロスタートの数字から想像するよりわずかながらも速く感じられるということだ。

にもかかわらず、われわれは230iこそが2シリーズクーペのスイートスポットだと考える。価格は3655ポンド(約60万円)高いが、61ps/10.2kg-mアップする。とくに、パワーもトルクも上がったGR86と比較するなら、なおさらこちらだ。

2シリーズクーペは全車、ZF製の秀逸な8速ATを搭載し、DCTだと勘違いしてもおかしくないくらい素早く変速する。パドル操作へのレスポンスや、スムースではないシフトの際にときどき発生するショックもそうだ。さらにいえば、エンジンのレスポンスにも、トルクコンバーターがすべっているような兆候はまったくない。

最新のBMWが軒並みそうであるように、この2シリーズも走らせ方をさまざまに変更できる。エコプロモードではレスポンスが鈍くなり、ノーマルはその名のとおりノーマルな印象だが、ギアボックスの設定はややモード燃費を最適化する目的が感じられる。結果、エンジンが無理をすることになり、洗練性が損なわれている。

スポーツモードではレスポンスが向上するが、セレクターレバーをスポーツモードに入れたときとは異なり、1段あたりのギアを長く引っ張りすぎることはない。スロットルレスポンスも鋭くなり、合成エンジン音が大きくなり、ステアリングの手応えが重くなり、ブレーキも過敏になる。

ただし、ブレーキの設定変更はまったくの無駄だ。ノーマルモードでさえ、このクルマを文句なくスムースにストップさせるのは難しい。

スポーツ・インディヴィデュアルを選ぶと、それぞれの要素を個別に調整することはできるが、効きのきついブレーキだけは別だ。これはフラストレーションがたまる。というのも、ギアボックスがベストなのはスポーツモードで、合成エンジン音も本当に気分を盛り上げてくれるからだ。直4でも直6でもなく、まるで昔のフォードにあったV4のような、おもしろみのある音色だ。

増幅されていないB48ユニットのサウンドは個性に欠ける。ただし窓を開ければ、ターボやエキゾーストの音がキャビンへ入り込んでくる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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