日産スカイライン200GT-t Type P

公開 : 2014.07.16 23:55  更新 : 2017.05.29 19:27

■どんなクルマ?

じつに久しぶりとなる “スカイライン・ターボ” である。現行のV37スカイラインは2013年11月から日本国内でも販売されているが、これまでは3.5ℓV6+ハイブリッドのみの展開。待望のガソリン・エンジン搭載車は、2ℓ4気筒ユニットをターボチャージャーで過給して搭載する。

最高出力211ps、最大トルク35.7kg-mを発揮するこの4気筒ターボ・ユニットは、日産自製ではなくメルセデス・ベンツ製。現行EクラスのE250などが搭載するユニットを若干手直しして搭載する。E250では走行状況によって希薄燃焼を行うが、このシステムはスカイラインには搭載されない。

わかりやすく言えば “よりスポーティな仕様” なのだが、その反面、10.15モード燃費はE250の15.5km/ℓに対してスカイライン200GT-t は13.0〜13.6km/ℓに留まっている。組み合わされるトランスミッションはマニュアル操作が可能な7速オートマティックで、エンジン同様にメルセデス製となる。

駆動方式は2WDのみで、標準モデルとType P、Type SPという3グレード展開。価格は383万4000円〜456万8400円と、2ℓセダンとしてはなかなか強気の設定だ。

今回、試乗したのは中間モデルにあたるType P。内装に豪華な本革シートを採用するなど各種の装備を充実させながら、標準モデルと同様の17インチ・タイヤを装着する。なお最上位となるType SPではブレーキに対向4ポッド・キャリパーを装着、タイヤも245サイズの19インチが装着される。

■どんな感じ?

ハイブリッドとの違いは、外観からはほとんどわからない。ボディやホイールのデザインなどはすべて共通で、テールゲートに装着されたエンブレムだけが搭載エンジンを示している。

ドアを開けてシートに腰を降ろすと、目の前にはおなじみの風景が広がる。各種ボタンが機能的にレイアウトされたセンターコンソールの中央には、タッチパネル式の大型スクリーンが配され、カーナビの操作や車両状態の確認などを行うことができる。

それにしてもハイブリッドを試乗したときにも感じたけれど、V37スカイラインのステアリング形状は秀逸だ。個人的には、現行の日本車のなかで一番といってもいい。スカイラインの純正ステアリングといえば、R32 GT-Rのそれは今なお多くのファンに支持されているけれど、V37のステアリングも負けていないと思う。小指、薬指、中指の順でスポークを包み込むように握ることが自然に求められ、スポーツセダンに乗るんだという気持ちにさせてくれる。

ステアリングの話でいえば、この200GT-tでは “ダイレクト・アダプティブ・ステアリング” が採用されず、一般的な電動油圧式パワー・ステアリングとなる。ステアリングによる回転動作を電気信号に変換してタイヤを操作するダイレクト・アダプティブ・ステアリングは、追って2014年の秋ごろオプション設定されるというが、スポーティな走りを好むオーナーには従来の電動油圧式が好まれることも事実だろう。

そして気になるターボ・エンジンは、さすがに “次世代ターボ” を謳うだけあって良い意味で大人しい仕上がり。ボアに比べてストロークが長く設計されたエンジンにターボチャージャーを組み合わせ、1250rpm.から最大トルクを発生させる。決して小さくない車体ながら、スロットル・ペダルの動きに忠実に反応して箱根のワインディングをグイグイと登って行く。ハイブリッドの同グレードと比べて100kgほど軽い車両重量は、加速・減速そしてコーナーが続く切り返しなど、あらゆる場面で体感することができる。

エンジンやトランスミッション、ステアリングのアシスト量などを走行シーンによって切り替えられる “ドライブモードセレクター” は200GT-tにも搭載され、ATセレクターレバーの手前に備えられたスイッチでSTANDARD/SPORT/SNOWの3モードに切り替えることができる。さらにPERSONALモードでは、オーナーの好みで各項目をカスタムし、計12通りの組み合わせが可能となる。

SPORTモードではATのシフトアップポイントも高回転に設定され、レッドゾーン手前までをきっちり使いきりながら走ることができる。そして高回転域を使用して走る際に、車内で聞こえるエキゾースト・ノートが気持ちいい。エンジンはメルセデス製とはいえ、タービン以降の排気系はスカイラインの車体や性格に合わせて日産が開発を重ねたとのことで、そのあたりの拘りは嬉しくなるポイントだ。

■「買い」か?

日本の自動車史において、スカイラインの車名は長い伝統を持ち多くのファンに支えられている特別な存在だ。かつてはレースシーンで大活躍し、S20型やRB26型という直列6気筒エンジンとともに栄光の歴史を重ねた。ストリートではL型やRB20/25、そして4気筒ターボといえばFJ20型などの名前が思い浮かぶ。歴代スカイラインには、常に個性豊かなキャラクターを持つエンジンの存在があった。

そのスカイラインのエンジンが他社製を搭載したことに、複雑な心境を持つファンの方は多いかもしれない。しかしスカイライン200GT-tは、パワーやトルク、ドライバビリティのいずれも “スカイラインらしさ” を感じさせる素晴らしい相性の良さを感じた。前述のようにメルセデス版とは細部の仕様が異なり、現在の水準で見ると決して燃費も格段に優れているとは言いづらい。直噴ユニットらしく、アイドリング中のノイズは(車内はともかく)車外では大きめに聞こえる。

しかし優等生きわまりないハイブリッドに比べると、わずかながらも各所にヤンチャなイメージが感じられる200GT-tのほうが、よりスカイラインらしいと思えることは事実。だからこそ、この200GT-tをベースにスポーティな仕様とした “NISMO” モデルが設定されたら……と期待を抱かずにはいられない。あるいはオーテック仕様とか。きっと面白い存在になると思うのだけれど。

(text & photo:佐橋健太郎)

スカイライン200GT-t Type P

価格 4,212,000円
燃費 13.0km/ℓ
乾燥重量 1670kg
エンジン 直列4気筒1991ccターボ
最高出力 211ps/5500rpm
最大トルク 35.7kg-m/1250-3500rpm
ギアボックス 7速オートマティック

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