群を抜く躍動感:ディアブロ 時間の流れとは無縁:エリーゼ S1 輝かしい1990年代のクルマ(2)

公開 : 2025.04.26 09:46

1990年代がクルマ好きにとっての黄金期だった? 今にはない純粋さと個性が宿るモデルたち 愛おしい気持ちは思い込みではないのか? UK編集部の気になる10台を試乗で振り返る

ランボルギーニディアブロ:群を抜く躍動感

1990年に登場したランボルギーニ・ディアブロは、今でも強く惹かれるクラシック・スーパーカーだろう。カウンタックの後継モデルとして登場し、四輪駆動を先駆けて導入。今回のSVは、後輪駆動の進化版となる。

ディアブロは、ランボルギーニがクライスラー傘下だった時代に開発された。マルチェロ・ガンディーニ氏によるスタイリングは、クライスラーの解釈で柔らかく調整され、時代の経過は隠せていない。

ランボルギーニ・ディアブロ(1990~2001年/英国仕様)
ランボルギーニ・ディアブロ(1990~2001年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

今回ご登場願った1台は、AUTOCARがかつて試乗テストした車両。シザーズドアは乗降性に優れず、運転姿勢は少しぎこちない。後方視界は極めて悪く、バックでの駐車は簡単ではない。

それでも、V12エンジンのパワーとサウンド、ゲートの切られたマニュアルが相乗した、運転体験は濃密。現代的な制限とは無縁の、群を抜く躍動感に圧倒される。特性を理解すれば、運転もさほど難しくはない。

ステアリングは重いが、グリップは見事。車重は1570kgと、2025年の水準では軽い。30年前には大きすぎ重すぎると感じたディアブロSVだが、今走らせると、そんなことはまったくなかった。

ロータス・エリーゼ S1:時間の流れとは無縁

1995年に発売されたロータス・エリーゼ S1のデザインは、時間の流れと無縁なように見える。オリジナルこそ最高、と認めるファンは少なくない。均整の取れた滑らかなボディは、現代でも充分に通用するだろう。

エリーゼ S1は、技術的にも古くはない。押出成形されたアルミニウム材をシャシーへ採用し、劣化しにくい接着剤で結合。優れたシャシー剛性と軽さを叶えている。

ロータス・エリーゼ S1(1996〜2001年/英国仕様)
ロータス・エリーゼ S1(1996〜2001年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

この時代のロータスは、前輪駆動の新世代エランで失敗した後だった。しかしコンパクトでシンプルな後輪駆動という、創業者のコーリン・チャップマン氏の哲学が、しっかり取り戻されている。

その頃のAUTOCARは、新しいセブンだと評して魅了された。セブンより洗練度は遥かに高く、車重は重かったものの、一般的で高価ではないコンポーネントが巧みに利用されていた。

筆者は、エリーゼ S1を2台所有した。馬力の割に速く、敏捷で運転が楽しく、信頼性も低くなかった。乗降性は悪く、閉めれば特別な空間が生まれるソフトトップは、扱いにくかった。それでも、パワーステアリングが不要な理由を味わわせてもらった。

メルセデス・ベンツAクラス:小さなボディに大空間

初代メルセデス・ベンツAクラスは、個性の強さで自動車史に刻まれる1台だ。発売当初、エルクテストと呼ばれる危険回避テストで安定性を失い、話題を集めたことをご記憶の読者はいらっしゃるはず。

ドイツの高級ブランドが、フォードルノーといったベーシックブランドのシェアを奪い取るための、新カテゴリーとして開発されている。全長は3615mmと短く、全高は1600mmと高い。

メルセデス・ベンツAクラス(初代/1997〜2005年/英国仕様)
メルセデス・ベンツAクラス(初代/1997〜2005年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ジェームス・ディスデイルは、用意したA 140へ吸い寄せられるように近づく。「運転してみると、革命が起きなかったのが不思議に思えます。販売数も悪くありませんでした。大胆なアプローチへ追従する他メーカーは、ほぼ現れなかったんですよね」

開発費は膨大だったが、小さなボディに驚くほどの空間が創出されている。巧妙なサンドイッチ構造のシャシーは、衝突時にエンジンが車内へ侵入するのを防いでいる。

「SUVのような着座位置は、優れた視界を生み出しています。エルクテストの結果を忘れさせるほど、走行時の安心感は高く、機敏に扱えますよ」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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