クルマ好きを魅了するNA V12 アストン マーティンDBS 英国版中古車ガイド 誰もが認める美貌

公開 : 2022.11.02 08:25

007「カジノ・ロワイヤル」でボンドカーを務めたDBS。想像より手頃な、美しいグランドツアラーを英国編集部がご紹介します。

クルマ好きを魅了する自然吸気の5.9L V12

映画007「カジノ・ロワイヤル」で派手なスピンを披露したアストン マーティンDBS。クライマックス・シーンでボロボロにされた姿へ、胸を痛めたクルマ好きもいらっしゃったことだろう。

アストン マーティンが、これほど心を奪う理由は何なのだろう。優雅でありながら堂々としたスタイリングは、間違いなくその1つ。だがそれと同じくらい、サウンドも素晴らしい。

アストン マーティンDBS(2007〜2012年/英国仕様)
アストン マーティンDBS(2007〜2012年/英国仕様)

滑らかに伸びたボンネットの下に閉じ込められているのは、5.9Lの自然吸気V型12気筒エンジン。誰もが夢中になる、忘れられない咆哮を周囲へ撒き散らす。最高出力は517psで、動力性能の面でも圧倒されるものがあった。

ヴァンキッシュやV12ヴァンテージにも搭載されたユニットではある。だが、包まれたボディを問わず、クルマ好きを魅了してやまない名機といっていい。

DBSではレッドラインが6900rpmに設定され、0-100km/h加速は4.3秒。最高速度は307km/hを実現していた。ターボエンジンとは異なり、回転の上昇とともにエネルギーがみなぎっていくさまは痛快そのものだ。

開発ベースになったのはDB9で、もちろんドライビング体験も極上。特に6速MTを組み合わせれば、心地良い変速フィールとともに、大排気量エンジンを直接操っているという濃密な楽しさに浸れる。

クーペのDBSと、コンバーチブルのDBS ヴォランテは、確かに軽いクルマではない。ボディサイズも大柄ではある。それでも、操縦性はかなり磨き込まれたものだった。

想像より安い優秀なグランドツアラー

サスペンションはボタン1発で公道向けの柔軟な状態から、サーキット向けの引き締まった状態へ一変。ステアリングの反応は正確で、ブレンボ社のブレーキが強力な制動力でハイスピード・ドライブをバックアップしてくれる。

重めの車重にハイパワーなFRレイアウトだから、トランスアクスル・レイアウトだとしても、トラクション不足に陥ることはある。濡れた路面では、3速でもホイールスピンを招きかねない。トラクション・コントロールの警告灯は、見慣れたものになるだろう。

アストン マーティンDBS(2007〜2012年/英国仕様)
アストン マーティンDBS(2007〜2012年/英国仕様)

DBSは優秀なグランドツアラーでもある。ロードノイズは古い舗装でなければ充分に抑えられ、風切り音もうるさくない。高速道路をヒタヒタと走るような場面では、V12エンジンは穏やかに必要なエネルギーを発生する。不必要に静かだと感じるほど。

そんな有能なボンドカーは、きっと高いに違いないとお考えかもしれない。実際は、想像するほどではない。安くはないものの、英国ではそこそこの状態で6万5000ポンド(約1072万円)程度から探すことができる。

Eセグメント・サルーンの上級グレードと同等の価格で、アストン マーティンを手中に収めることができる。翼を広げたエンブレムに魅惑的なフォルム、没入型のドライビング体験や孤高のサウンドも、独り占めすることができる。

いつかはアストン マーティンをとお考えなら、行動に移すべきは今かもしれない。近年の同ブランドで最も洗練された1台を、許されるうちに味わってみてはいかがだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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