シトロエンを120台所有する男 マニア必見のコレクション(後編) 巨大な個人博物館

公開 : 2025.07.26 19:25

フランスの熱心な自動車コレクターが作り上げた、シトロエン専門の博物館を紹介します。保管されている120台はすべて個人所有で、その1台1台にさまざまな「物語」が詰まっています。ダブルシェブロン愛好家必見です。

年代の新しいコレクション

博物館の3つ目の展示フロアには、さまざまなGSおよびGSAモデルに加え、比較的新しいクルマも数多く展示されている。クラシックカーとしての地位を確立しつつあるもの、あるいはまだその段階には至っていないものもある。

AXやエグザンティアといったモデルは減価償却のカーブの底辺にあり、無関心なオーナーの手元に置かれている場合も多く、新車同様の車両を間近で見られることなどめったにない。

ここからは比較的新しいモデルの展示を紹介していこう。
ここからは比較的新しいモデルの展示を紹介していこう。

ただし、シトロミュージアムではすべてのシトロエン車を所蔵しているわけではない。例えば、ZXやクサラはコレクションには含まれない。フラデ氏は、まだ走行距離が少なく、比較的入手しやすい新しいモデルにはあまり興味がない、と語っている。

SM(1971年)

シトロエンは、1968年に買収したマセラティと共同で、高性能の最上位モデルとしてSMを開発した。このクーペは、油圧式サスペンションによる快適な乗り心地、豪華なインテリア、マセラティ設計のパワフルなV6エンジンなど、フラッグシップモデルにふさわしい装備と性能を誇っていた。1970年の発売当時、SMは欧州市場で最も先進的なクルマの1つとして高い評価を得ていた。

SMは米国でも一時的に成功を収めたが、サスペンションが連邦の車高規制に抵触し、販売中止となった。フラデ氏は、モナコでこの1971年製の個体を購入した。走行距離は3万8000kmで、博物館にはほかにも複数台のSMが保管されている。

SM(1971年)
SM(1971年)

GS(1972年)

GSは、1970年に2CVおよびその派生車種と、大型のDスーパーとの間のギャップを埋めるために登場した。この1972年製のクラブモデルを購入した夫婦は、納車後まもなく離婚した。彼らは購入元のディーラーにクルマを返却し、戻ってきた代金を分割したそうだ。

ディーラーは中古車として販売することなく、何十年にもわたって新車同様の状態に保存していた。走行距離は2000km未満で、現存する最もきれいな個体の1つだ。

GS(1972年)
GS(1972年)

GSビロトール(1974年)

シトロエンは、M35プロジェクトで得た教訓をGSビロトールに反映させた。最高出力105psのツインローター・ヴァンケルエンジンを搭載し、GSファミリーの最上位モデルとして販売された。価格と装備もそれに応じたものだった。外観では、標準のGSと比べてワイドなフェンダー、専用のホイールとハブキャップ、充実した計器類、一体型ヘッドレストを備えたシートが特徴だった。エンジンが7000rpmのレッドラインに達すると、警告音が鳴った。

GSビロトールは、1973年の石油危機からわずか数か月後に発売されたため、商業的には失敗に終わった。燃費の悪さがロータリーエンジンの大きな欠点の1つであり、シトロエンもそこを改善できなかった。847台が生産された後、販売中止となり、シトロエンはオーナーに太っ腹な下取り額を提示することですべての車両を買い戻そうとした。歴史家たちは、総生産台数の約3分の1が現在も残っていると推定している。

GSビロトール(1974年)
GSビロトール(1974年)

フラデ氏のビロトールは1974年に生産された個体で、1995年にシトロエン愛好家の集会に向かう途中でエンジン故障に見舞われた。フラットベッドで会場に運ばれ、そこで売却され、南フランスのカンヌに輸送された。2009年に、走行距離約2万8000 kmでシトロミュージアムに収蔵された。現在、この個体は修復作業中で、コレクションの中で唯一走れないクルマとなっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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