ルノー・メガーヌE−テック・エレクトリック 詳細データテスト 乗り心地上々 ステアリングに難あり

公開 : 2022.12.03 20:25  更新 : 2023.01.04 23:46

内装 ★★★★★★★☆☆☆

ルノーは時流に逆行して、新たなEVラインナップにFFレイアウトを採用しようとしている。そうなると、大きな疑問は室内スペースがどうなっているかだ。

これはある程度うまくいったといえる。荷室容量は440Lで、メガーヌよりボディサイズの大きいクプラボーンが385L、キア・ニロEVが475L、同等サイズのMG 4が363Lなのに対してアドバンテージのあるスペースを確保している。

荷室は広く、スイッチやインフォテインメントの使い勝手も悪くない。しかし、調整機構などに不足を覚えるのと、素材選びに統一感がないこと、そして視認性の低さが悔やまれる。
荷室は広く、スイッチやインフォテインメントの使い勝手も悪くない。しかし、調整機構などに不足を覚えるのと、素材選びに統一感がないこと、そして視認性の低さが悔やまれる。    MAX EDLESTON

これはひとえに、モーターがリアではなくフロントにあるおかげ。フロア下には33Lのストレージもあり、充電ケーブルを収納しておけるほどだ。

ただし、この深さはよかれあしかれで、開口部や倒した後席と荷室フロアに大きな段差ができてしまう原因にもなっている。高さ調整式のフロアがあれば解決できるが、このクルマにその設定はない。

乗員スペースは、ライバル車ほど広くない。685mmの後席レッグルームは、クプラの750mmやキアの760mmに水を開けられている。もっとも、このサイズのハッチバックとしては平均的だが。これは、ヘッドルームにも同じことが言える。

しかし、それより深刻な問題がある。フロントシートはとても快適で、ステアリングコラムの調整幅も大きい。しかし、座面のチルトができず、背の高いドライバーはシートをかなり後方へ下げないといけない。当然、後席レッグルームを圧迫することになる。

また、高めのベルトラインも難ありだ。このおかげで、メガーヌはベースとなったコンセプトカーのようなルックスを実現しているのだが、視界はひどく損なわれる。

ゴツいCピラーと、ポストの口のように狭いリアウインドウも大きな死角を生んでいて、後席は閉所恐怖症だと耐えられないような空間になっている。ブラインドスポットモニターは高額なテクノグレードにしか装備されていない。これほど周囲が見づらいクルマなら、標準装備にするべきだ。

前席については、おおむねよくできた運転環境が整っている。センターコンソールの収納スペースは十分に大きく、より広くスペースを使ったり、カップホルダーを増やしたりできる仕切りもついている。

英国仕様は12.3インチのデジタルメーターと9.0インチのインフォテインメントディスプレイが標準装備で、ふたつの画面は1枚の大きなパネルへスッキリ収められている。ほかのマーケットで選択できるより大きな画面のインフォテインメントディスプレイは用意されないが、小さいほうの画面でも新規採用のGoogle製ソフトウェアはよく機能している。

エアコンの実体スイッチが、より手元に近く設置されているのもありがたい。ステアリングスイッチはツヤのある仕上げで、タッチパネルかと思わせるが、どれも実体ボタンだ。コラムレバーも操作性に文句はない。

ちょっと残念だったのは、デジタルメーターに、カスタマイズの選択肢があまりないことだ。見栄えのいい表示はいくつか用意されているが、せっかくの大画面を十分に使い切っているものがない。たとえば、パワー/エネルギー回生のゲージとマップを同時に表示することはできなかったりする。

ルノーが選んだマテリアルは、どうにもごちゃ混ぜな感じだ。シートとダッシュボードのファブリックは素朴なラウンジ風で、ステアリングホイールの合成皮革はまるで本革のような手触りのよさ。ドアパネルにはソフトな素材が張られている。

ところが、同じドアの上部にひじをかけてみると、これがガチガチに硬いプラスティック。ワイヤレス充電器を備えるダッシュボードの出っ張りも同様だ。ドアには見栄えのいいアルカンターラの帯も張られているが、インテリアのほかの部分とはまったく釣り合っていない。

たしかにルノーは、インテリアに安っぽさを感じさせないという点では成功している。とはいえ、複数のデザイナーが話し合いもせず、それぞれの場所を仕上げてしまったようなチグハグさが出てしまっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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