BMW i7 詳細データテスト 静粛性と乗り心地は秀逸 4WSの俊敏さは驚異的 航続距離は要改善

公開 : 2023.02.25 20:25  更新 : 2023.03.04 23:07

走り ★★★★★★★★★☆

i7は、バッテリーコンディションや、それに伴う電圧の、控えめな加速中に見せる低下具合を測るのに有効な例ではないだろうか。いつもどおり、評価は80%以上チャージした状態で行った。

驚くほどスムースで、全体的にシームレスなパワーや、専用設定のローンチコントロールにより、4回行った0−161km/hとそれ以上の発進加速タイムは、100分の1秒単位の誤差内に収まった。

AMG版のEQSには及ばないまでも、アウトバーンを駆け抜けるにふさわしいクルマだ。しかも静かで、ペダル操作への反応も自然だ。
AMG版のEQSには及ばないまでも、アウトバーンを駆け抜けるにふさわしいクルマだ。しかも静かで、ペダル操作への反応も自然だ。    MAX EDLESTON

やや風の強い冬の日のテストだったが、このクルマはほぼ風の影響を感じさせなかった。加速テストの最中に、普通なら盛大に進路を逸らされそうな強風を受けてもだ。

それだけではなく、高速道路やA級道路では、とりわけ長距離走行時に、ドイツ製フルサイズサルーンの新たな最高水準だと感じられる。キャビンの静粛性は卓越しているが、美点はそこにとどまるものではない。熟練の技が生む高級車レベルのドライバビリティと、有無を言わさず楽に長距離を走り切るペースのブレンドも味わえるクルマだ。

ほぼドライコンディションな路面でのタイム計測では、0−97km/hが公称データどおりといっていい4.5秒で、ゼロヨンは12.9秒をマークした。昨年テストしたメルセデスAMG EQS 53には及ばなかったが、価格やポジショニングを考えればやむをえないところだろう。

EVに多く見られる傾向だが、80km/h以下のペースは、それ以上より速さを感じる。しかし、高速道路の速度域でも力強さは損なわれず、アウトバーンを意識したクルマだと思わされる。80−128km/hが3.3秒というのは、ポルシェタイカンRWDパフォーマンスパックに比べてもコンマ1秒遅れるのみだ。

パワーの上がり方は唐突ではなく、慎重なまでにプログレッシブで、同乗者が意図せぬ急激なペダル入力で驚くようなことはまずない。

バッテリーの回生も同様で、デフォルトではアダプティブ調整が入り、さらに高低3つのモードが選べる。アダプティブセッティングの機能ぶりは上々で、渋滞ではうまく動きを調節してくれて、ジャンクションでは自動的に減速してくれる。

とはいえ、ショーファードリブンのスムースさを求めるなら、効きを弱めざるをえないのも事実で、バイワイヤで電動アクチュエーターを用いるフットブレーキを使うことになる。多くのEVに比べ、プログレッシブさや合成的なフィールはかなり優れている。

ステアリングホイール裏の左側には、ブーストと記されたパドルがある。これは電動パワートレインから、短時間の最大加速を引き出すものだ。とはいえ、その恩恵はかなりのものだが、低速域でもたらされるので、この手のクルマにはそれほど必要性が高くないようにも思える。

ありがたいことに、これはチューニングの優先順位を見誤ったことを象徴するようなものではない。i7はなにを目指すべきか心得ている高級車だ。じつのところ、乗員をきわめて効果的に守ってくれるクルマだといっていい。

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