レクサスRX 詳細データテスト 高級で快適 パワートレインは優秀 シャシーのスポーティさは不足 

公開 : 2023.04.02 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

パワートレインが重量のかさむPHEVではなくても、RX500hは大型SUVセグメントにおいて、アジリティやハンドリングバランス、ボディコントロールの新たなベンチマークにはなれなかった。価格を考えると、これは驚きであり、残念に思うという声も上がるだろう。

しかし、歴代RXを知るドライバーであれば、おそらくは想定内だろう。彼らの優先事項は快適性や高級感、静粛性やイージードライブな利便性だからだ。結局のところ、レクサスの購買層にそっぽを向かれるようなクルマにはなっていない。

歴代RXがそうだったように、RX500hもまた快適性や高級感、静粛性やイージードライブ性を重視している。Fスポーツであっても、アジリティが特別高いわけではない。
歴代RXがそうだったように、RX500hもまた快適性や高級感、静粛性やイージードライブ性を重視している。Fスポーツであっても、アジリティが特別高いわけではない。    MAX EDLESTON

独特な走りのキャラクターはレクサス・ドライビングシグネチャーと銘打たれ、かなり明確に定義されている。方向転換のチューニングは、急激さよりスムースさを目指したもの。ボディコントロールはフラットで抑えの効いた挙動だが、硬さやアグレッシブさはない。ステアリングフィールは豊富だが、なめらかかつ精密で、活発な感じではない。ターンインは予測が効き、そこからバランスの取れた、落ち着いて正確な、腰のすわったライン取りでコーナーを抜けていく。

そう聞くと、控えめでおとなしいと思われそうだが、ゆったり曲がりくねった道ではそう表現していいだろう。スプリングはソフトで、アメリカの高速道路向けの乗り心地を思わせる。舗装のいいところで速度を上げると、路面をほとんど知覚できないくらい、歩幅が大きい感じの走りをみせて、中くらいの隆起などは吸収してしまう。

しかし、複雑なカントリーロードではそうはいかない。道の中央が高くなり、盛り上がりが道を横断し、溝がはっきり刻まれているような路面では、バネ上が横にもじもじ身じろぎするようになって、急にこのクルマのサイズと重さが意識され流ようになる。

アダプティブダンパーは、どのモードを選んでも、制御すべきボディ挙動が多くなると早々に音を上げる。のたうったり、激しいロールやピッチが出たりはしないが、ヘッドトスはかなり多い。

よりタイトなコーナーでは、四輪操舵も同じく、ライバルに比べればおとなしいものだ。ターンインでのRX500hは、目に見える食いつきや敏捷性が感じられない。速いコーナリングをすると、後輪のトルクベクタリングも体感できず、逆にエンジンのトルクが前輪へ突如として加わり、その後のコーナリングの安定感が乱されてしまう。

そこそこのスピードで、束の間その走りを楽しみ、正確な運転をする限り、これはいいクルマだ。しかし、エンスー好みの走りを追求できるものではない。リラックスしたペースで走ることを想定したクルマだという点は、RXのどのモデルでも同じことが言える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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