レクサスRX 詳細データテスト 高級で快適 パワートレインは優秀 シャシーのスポーティさは不足 

公開 : 2023.04.02 20:25

走り ★★★★★★★☆☆☆

レクサスがこのクルマに、PHEVパワートレインを採用しなかったことはじつに意義深い。おそらくこれは、重量増加を嫌ってのことで、分別を持ちながらもパフォーマンスを高め、そのほかの部分でも成果を上げるのが狙いだろう。

同価格帯でこれより速いハイブリッドSUVはたしかにある。とはいえ、RX500hは興味をそそる程度には力強い。0−97km/hが6.1秒というのは、2023年のマーケットでは正真正銘のパフォーマンスカーというには物足りないが、48−113km/hは5.5秒とやや持ち直す。中間加速のほかの領域でも同じことが言える。

あえてPHEVとしなかったことで、重量面で優位性を手にしたRX500hは、中間加速で強みを見せる。しかし、せっかくのATが、マニュアルモードでもキックダウンしてしまうのは残念だ。
あえてPHEVとしなかったことで、重量面で優位性を手にしたRX500hは、中間加速で強みを見せる。しかし、せっかくのATが、マニュアルモードでもキックダウンしてしまうのは残念だ。    MAX EDLESTON

また、この500hに積まれるレクサスのハイブリッドは、実際にギアを選択することができるシステムだ。高いギアを選んで、低回転から踏んでいくと、電気モーターのブーストが実感でき、クルマの重さが軽減されるように感じられる。そして、レスポンスのよさやエネルギッシュさが味わえる。

2019年にテストしたマセラティレヴァンテSはV6と8速ATを搭載していたが、5速・80−113km/h加速が4秒だった。RX500hの6速ATで、ギア比が近いのは4速だが、そこで同様の加速に要したのは3.8秒だった。

レクサスは4気筒エンジンのサウンドを合成音で高めている。低回転で高負荷をかけたり、普通に走らせていてパワーを出そうとしたりするとそれがよくわかるが、エンジンをハードに回すとそこまでではない。また、高回転ではエンジンのスムースさに欠け、回転の自由度も物足りない。ある種、マルチシリンダーのようなクオリティは結果として得られるが、誰もが納得できるものではない。

しかし、ちょっと残念だったのは、わざわざステップ式ATを採用していながら、ギアを完全固定できるマニュアルモードがないことだ。手動変速用のMレンジと、パートタイムマニュアルのDレンジが用意されていながら、スロットルペダルをある程度強く踏み込むと、トランスミッションはキックダウンしてしまうのだ。

シフトパドルでのギアチェンジは積極的に変速できるが、常に素早いというわけではない。それでも、自分でギアを選び、ハイブリッドパワートレインが力強さを発揮してくれるのは、運転操作を楽しみたいときに大きな違いとなる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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