マツダCX-60 詳細データテスト 経済性と直6の美点を両立 内装は高質感 乗り心地は改善に期待

公開 : 2023.05.20 20:25  更新 : 2023.06.09 14:13

走り ★★★★★★★★☆☆

直6ディーゼルは3.3Lもの排気量がありながら、200psという出力は、BMW X3 20dの2.0L直4の191psをわずかに上回るのみ。排気量比で見れば、1Lあたり61psに過ぎず、BMWの95psに及ばない。

これはあえての設定だ。低負荷で使う6気筒は、高負荷のかかった4気筒より運転しやすく、経済性にも優れる。これこそがマツダの狙いで、熱効率は40%に達するという。

排気量のわりに出力は控えめだが、そのぶん高効率。エンジンに熱が入るまでは低速でのノイズが気になるが、暖気が済めば気持ちよく回り、力強い。ブレーキ性能も高い。
排気量のわりに出力は控えめだが、そのぶん高効率。エンジンに熱が入るまでは低速でのノイズが気になるが、暖気が済めば気持ちよく回り、力強い。ブレーキ性能も高い。    LUC LACEY

スペック表上での旗色を悪くしているのは、テストした後輪駆動モデルが、X3の4WDモデルより57kg重いという事実だ。ただし、どちらもギア比は似たようなもので、トルクはやや高いのが、CX−60の助けになっている。これにより、X3よりすべての領域で速い。

とくに、0−97km/hは0.7秒、4速での48−113km/hは2.2秒勝っている。ただしゼロスタートでは、変速ありの場合ではあるが、アルファロメオ・ステルヴィオに水をあけられている。

体感的には、オールドファッションな直6ディーゼルでありながら、目新しさがある。ほとんどのクルマより始動までにはやや長く回り、低回転・低負荷時には、とくに油温が上がる前だと、バスのようなディーゼル特有のノイズが出る。第一印象は、さほど背年されていないエンジンだと思うはずだ。アイドリングでの振動も気になる。

ところが、エンジンに熱が入り、回転が上がると、違うサイクルに切り替わったように感じられる。スムースでストレスのない、直6ディーゼルらしいサウンドが耳をくすぐるのだ。そして、レッドラインまでじつに気持ちよく回ってくれる。

この手の大排気量ディーゼルでなによりすばらしいのは、リッチに盛り上がっていく中速域の無理を感じさせないトルクが、いつでも引き出せることだ。フル加速ならPHEVのほうが速いかもしれないが、フィーリングも音も常に、より激しく使っている感じが出てしまうだろう。

メカを感じながら走らせるのが好きなら、この新型エンジンの実直さを楽しいと思えるだろう。ほとんどの場合、荒っぽさは気にならないが、静かすぎるEVとはまったく違うものなのだから。

マイルドハイブリッドシステムは、下り勾配でエンジンを切ってコースティングを使い、静粛性を高めるために多大な貢献をしてくれる。やたらとエンジンを止めたがらないのもすばらしい。ただし、再始動のスムースさは完璧とは言えない。

8速ATはスムースでレスポンスがよく、変速タイミングの選び方も賢い。驚いたのは、これがじつにぎこちなかったPHEVと同じギアボックスだということだ。

バイワイヤ式のブレーキが、これまた模範的な出来栄えだ。テストコースのウェット路面では、ドライ路面でのアウディSQ5と同じくらいの距離で制動できるうえに、ペダルのフィールは安心感を与えてくれる硬さがあり、スムースに止まるのも朝飯前だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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