息を呑むような曲線美 シボレー・コルベット C3 LT-1 アメリカン・スポーツの代名詞(1)

公開 : 2023.11.11 17:45

ビッグブロックに並ぶパワーを、軽いスモールブロックで

シャシー周りは、先代のC2と共通する部分が多い。サスペンションは、フロントがコイルスプリングにウィッシュボーンという組み合わせ。リアは横方向にリーフスプリングをレイアウトした、独立懸架式だった。

当初は、V型8気筒エンジンも先代譲りで、327cu.in(5.3L)のスモールブロックが標準。1969年に350cu.in(5.7L)へ排気量が増やされ、ビッグブロックも7.0Lから7.4Lへ拡大している。

シボレー・コルベット C3 スティングレイLT-1(1970〜1972年)
シボレーコルベット C3 スティングレイLT-1(1970〜1972年)

どのユニットがコルベットに最適か、その頃からファンの間で意見は別れてきた。ビッグブロックの力強さは魅力的ながら、重い塊がフロントに載り、操縦性の悪化を指摘する人は少なくなかった。冷却上の課題もあった。

そこへ最適解をもたらしたのが、シボレーの技術者、ゾーラ・アーカス・ダントフ氏。ビッグブロックへ並ぶパワーを、軽量なスモールブロックで叶えようというアイデアが、LT-1ユニットで実現する。

本来は北米のスポーツカーレース、トランザム・シリーズへ参戦するシボレー・カマロのために開発されたものだったが、1970年からC3のコルベットにも登用。ハイリフトカムに鍛造ピストン、高圧縮比化で、5.7Lの排気量から375psが引き出された。

7.4Lのビッグブロックには20ps届かなかったが、エンジンは83kg以上も軽く、50:50という理想的な前後重量配分を実現。サスペンションも引き締められ、ドライバーズ・チョイスとして瞬く間に注目を集めることになった。

シリアスなドライバーへ向けられた特性

恐らく現在でも、C3で最も注目すべきは、このTL-1ユニットを搭載したモデルだろう。先代より座面の位置は低く、ウエストラインは高い。逆スラントしたダッシュボードと相まって、運転席へ座るとタイトなコクピットに収まったという感覚が湧いてくる。

長距離ドライブへ対応する快適性を備えつつ、車内は明らかにスポーティ。シリアスなドライバーへ向けられた特性は、2023年の英国の湿った路面でも存分に発揮される。

シボレー・コルベット C3 スティングレイLT-1(1970〜1972年)
シボレー・コルベット C3 スティングレイLT-1(1970〜1972年)

ステアリングの遊びは小さくないものの、2代目と比べて身のこなしは遥かに軽快。今回ご登場願ったC3は、オーナーの好みでローダウンされており、一層機敏に感じられる。

アンダーステアは抑えられ、鋭くフロントノーズが向きを変える。比較的低めのコーナリングスピードでも、テールは横へ流れやすい。50km/h程度でも、雨の日ならドリフトに興じれるだろう。

しかし、1970年代のアメリカは厳しい時代だった。自動車メーカーは強化された排気ガス規制の対応へ追われ、LT-1も1年後にはパワーダウンを余儀なくされた。コルベット全体で、平均30psも最高出力は絞られている。

LT-1は1972年に選択肢から消え、ビッグブロックも1974年に終了。1980年には、202psを発揮するスモールブロックが残るだけになった。最高出力はグロスからネット表示へ改められていたが、動力性能は大幅に低下していた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

シボレー・コルベット アメリカン・スポーツの代名詞の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

シボレーの人気画像