BMW5シリーズ 詳細データテスト 強心臓と洗練されたサスペンションを兼備 車体は大きくなりすぎ

公開 : 2024.04.13 20:25  更新 : 2024.04.20 04:54

走り ★★★★★★★★★☆

2005年の登場以来、550を名乗る5シリーズのガソリン車はV8モデルだった。最新モデルは6気筒となったが、パフォーマンスが低下したわけではない。

0−97km/h加速は4.4秒で、V10を積んだE60世代のM5より0.2秒速い。さらに0−161km/hは9.9秒で、おそらくMバッジなしのBMWとしては初の10秒切りだろう。

Mモデルに迫る速さを秘めているが、普段使いで無駄にそれをひけらかしたくはならないのが、この5シリーズの6気筒PHEVだ。
Mモデルに迫る速さを秘めているが、普段使いで無駄にそれをひけらかしたくはならないのが、この5シリーズの6気筒PHEVだ。    MAX EDLESTON

もちろん、この5シリーズPHEV最強モデルは、走り出しからその速さを示すわけではない。デフォルトはEVモードで走り出す。スタートにエンジンを使うのは、充電が切れている場合や急加速が必要な場合、またギアボックスがシフトアップを7400rpmのレッドライン近くまで引っ張りキビキビ変速するSモードに入っている場合に限られる。

パフォーマンスの性質はおなじみのもので、トルクコンバーターを用いる非Mモデルらしく、変速は鞭のような鋭さをみせるわけではない。しかし、オイルポンプのアップグレードや振動減衰の改善を受けたこのZF製ギアボックスは、これまでどおりトルク伝達に無駄な切れ目を生むことはない。リニアなB58ユニットも、やはり甘美だ。

ピークトルクは1750〜4700rpmの間で発生。4気筒で後輪駆動の530eに対し、1万7000ポンド(約326万円)の価格差を正当化できるかと問われ、理性的に答えるならノーだが、これまでも550を名乗る5シリーズは必要性より欲求に訴えるクルマだった。

V8がラインナップされないのは残念だが、550eはエンジンとモーターをそれとは気づかせずに使い分ける能力がある。スポーツモードでは、ハイブリッドアシストがスロットルレスポンスを高めてくれる。3速での32−64km/hは1.9秒で、2021年に計測したM5CSを凌ぐほどだ。

しかしながら、その衝撃的なスピードが550eの売りではない。全体的に見ればリラックスしたツアラータイプの性格で、即座にワイルドなペースを引き出せる能力を持ちながら、それに溺れたい気持ちには決してさせない。これぞ、羊の皮を被った狼という形容がピッタリのクルマだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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