BMW5シリーズ 詳細データテスト 強心臓と洗練されたサスペンションを兼備 車体は大きくなりすぎ

公開 : 2024.04.13 20:25  更新 : 2024.04.20 04:54

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

550eには神経質なところがない。先代が全般的な安定性ですでに秀逸だったことを考えれば、ホイールベースが伸び、トレッドも広がり、BMWによれば重量配分も改善されたという新型がそうであっても驚くことではない。

さらに、550eには四輪操舵と5mmローダウンしたアダプティブサスペンション・プロフェッショナルが備わる。回転サークルを0.5mほど縮小するだけでなく、高速域での車線変更などでは前後同位相操舵によりスタビリティも向上する。

550eのサルーン然とした身のこなしは、7シリーズを思わせる。重さは500ps近いパワーでカバーできるが、ボディサイズの大きさを忘れさせてはくれない。
550eのサルーン然とした身のこなしは、7シリーズを思わせる。重さは500ps近いパワーでカバーできるが、ボディサイズの大きさを忘れさせてはくれない。    MAX EDLESTON

コーナリングスピードもかなりのものだ。効率重視のミシュランが発揮するグリップは最高とは言わないまでも、十分以上のレベル。とはいえ、印象に残るのはシャシーのコントロールの穏やかさだ。コーナーの路面に凹凸があったり、思いがけず曲率がタイトだったりすると、ピッチやロールは出る。しかし、その動きは巧みに制御され、サスペンションのトラベルの両極でもうまくクッションを効かせてくれる。スポーツモードではタイトになるが、M5ほどではないはずだ。

ブレーキペダルのフィールも良好で、自信をもって踏める。これも490psの5シリーズに、直観的なドライバビリティをもたらす一因となってくれる。

とはいえ、大きなクルマに乗っている感覚は拭えない。先代よりひと回り大きいフィールは、もはや適正サイズとは感じられない。実際、ボンネットの幅広さや、うまく抑えてはいるものの明らかにわかるボディの重さ、手応えはいいが電動であることが明白なステアリングフィールは、5シリーズより7シリーズに近いものだ。

550eは精確で安心感があり、プッシュするとスロットルでアジャストできるサルーンだ。とはいえ、いかにシャシーをチューニングしても、大柄であることをごまかしきれるものではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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