ヒョンデ・アイオニック5N 詳細データテスト ドライバーズカーEV誕生 重さを忘れるハンドリング

公開 : 2024.08.17 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

トラクションを扱い、状況によってはアジリティを高めるため、アイオニック5Nはフロントのブレーキによるトルクベクタリングと、リアの機械式LSDを用いる。LSDは3モード式で、ESCとステアリングの性格も同様。前マクファーソンストラット/後マルチリンクのサスペンションに組み込まれるダンパーも3段切替式だ。

会得すべきことは多いが、速く走らせるのに難しいことがいらないクルマなのはすぐわかる。英国では、サスペンションと、硬くてギア比設定のうまいステアリングのスポーティさはコンサバティブに、デフはアグレッシブなマックスアタックに、ESCは半分オフ寄りにするのがおすすめだ。

複雑なソフトウェアや仮想ギア、2235kgのウエイトが楽しいドライバーズカーに帰結することは稀だが、適切な設定をすれば、楽しく安全にコーナーを駆け抜ける。
複雑なソフトウェアや仮想ギア、2235kgのウエイトが楽しいドライバーズカーに帰結することは稀だが、適切な設定をすれば、楽しく安全にコーナーを駆け抜ける。    JACK HARRISON

そうすると、かなり速く、トラクションはすばらしく、横グリップも良好。しかし、どんなときでも、スロットルペダルだけで手際よく、正統派のようなスタイルで姿勢を変えることができる。1/4くらいのカウンターステアを当てて安全に楽しめるという点では、最高レベルのクルマだ。

仮想ギアも、その役割を果たす。公道を走るようなスピードにも意味のある前後関係をもたらし、1段か2段のシフトダウンで、メンタル的にも機械的にも、みごとなコーナリングへの準備を整えさせるという点では並ぶものがない。

ターンインは申し分なく、ノーズはフラットでステアリングは正確。いかに不器用なドライバーが操作してもも、サスペンションやステアリングへ自然にゆったりと負荷がかかるように思える。

優秀なホットハッチのように、スロットルを抜いた際のレスポンスをもっと高めることもできたはずだが、スロットルオンでの力強さで埋め合わせている。現時点のEVでは最高のドライバーズカーで、四輪による飾り気のない楽しみの追求における、複雑だが洗練されたソフトウェアのエンジニアリングの成功例だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事