レス・イズ・モアは電動にも ポルシェ・マカン 4Sエレクトリックへ試乗 期待通りに優秀

公開 : 2025.03.20 19:05

エンジン版の後継という重大な命題を背負うマカン・エレクトリック 理想を追求したPPE すべてがエンジン版と別物 バッテリーは95kWh ポルシェらしいまとまりの走り 英編集部が評価

理想を追求したPPE すべてがエンジン版と別物

ポルシェ・マカン・エレクトリックには、有能な初代の後を継ぐという、重要な命題が課せられている。ただし、その達成は簡単ではない。クラストップの走行性能に実用性、長距離の快適性、運転の楽しさなどを叶える必要があるからだ。

実際、現状の電動モデルの多くは、運転体験でエンジンモデルを超えてはいない。航続距離や車重という、避けられない足かせもある。マカン・エレクトリックのライバルは、ヒョンデアイオニック5 Nではなく、2025年で引退する同郷のエンジン版といえる。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

今回は、マカン 4Sエレクトリックを中心に、グレートブリテン島でその完成度を確かめたい。ポルシェらしさは宿るだろうか。

ゼロエミッションの理想的なマカンを作るため、同社はプレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)という名のプラットフォームを開発した。容姿は従来のエンジン版と似ているが、技術的にはまったく異なる。エンブレムすら、共有していない。

これはアウディとの共同開発で、Q6 e-トロンも採用することは、AUTOCARの読者ならご存知だろう。電動アーキテクチャは、電圧800Vで稼働する。2026年に登場予定の、カイエン・エレクトリックのベースにもなる。

現在のポルシェは、エンジン版のマカンとカイエンが、ベストセラーの2トップ。売上の50%以上を占めている。PPEプラットフォームが、極めて重要なブランドの土台を担うことは、想像に難くない。

バッテリーは95kWh ターボでは640ps

マカン・エレクトリックは、4種類が提供される。シングルモーターで後輪駆動の素のマカンと、ツインモーターで四輪駆動のマカン 4に、マカン 4S、マカン・ターボという構成が組まれている。

駆動用バッテリーは、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)が正極材のユニットで、容量は95kWhの共通。各セルは角柱で、急速充電は270kWまで。残量10%から80%までの回復は、最短21分でまかなわれる。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

最高出力は仕様で異なり、マカンは361ps。マカン 4では前後の合計で408ps。4Sでは517ps、ターボでは640psへ引き上げられる。その搭載位置は、ポルシェ911の重心バランスへ倣うように、各アクスルの後方が選ばれた。これは、Q6 e-トロンとは異なる。

ガソリンエンジンのマカン Sと比べて、車重はマカン 4で400kg重い。そのかわり、重心高は140mm地面へ近い。ボディサイズは103mm長く、15mm広く、2mm低い。

サスペンションは、マカン・ターボを除きコイルスプリングで、エアスプリングはオプション。後輪操舵システムは、4Sとターボでオプション設定される。トルクベクタリング機能付きのリアデフ(PTV+)は、ターボで標準装備。4Sでは、追加予算で組める。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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