個性が強いフランスの高級車 19選 「独自路線」の成功と失敗

公開 : 2025.06.21 18:25

1960年代から2020年代に生まれた、フランスの個性的な高級車を19台紹介します。ドイツ車とは一味も二味も違う、オリジナリティ溢れるクルマたち。必ずしも「傑作」ばかりではないところが、また愛おしくもあります。

ドイツ車とは異なる価値観

第二次世界大戦以前、フランスの企業は世界最高級の自動車を数多く生産していた。

ブガッティ、ドラージュ、ドライエ、サルムソンなどの名門メーカーは、フランス国内だけでなく海外でも栄華を誇っていた。しかし、戦後は高級セダンで利益を上げることが非常に困難になった。

フランスが生んだ個性的な高級車を19台ピックアップした。
フランスが生んだ個性的な高級車を19台ピックアップした。

ガソリンが配給制となり、フランス経済は低迷し、政府は「非必需品」と分類した商品に重い税金を課し始めた。高級車が再び日の目を見たのは1960年代に入ってからた。

今回は、1960年代から2020年代までにフランスの自動車メーカーが生産した高級車を、失敗作や傑作も含めて19台紹介する。

ルノー・ランブラー(1962年)

1950年代の大半においてルノーのラインナップの頂点に君臨していたのは、フレガートだった。ポントン型のデザインにより、主要なライバルの1つであるシトロエン・トラクシオン・アヴァンよりも格段にモダンな外観となっていた。しかし、1955年のパリ・モーターショーで前衛的なDSがデビューすると、状況は一変した。

ルノーは反撃を余儀なくされた。ゼロから高級セダンを開発するのではなく、アメリカン・モーターズ・コーポレーション(AMC)と契約を結び、『ランブラー』を欧州で生産・販売することにした。ルノーはランブラーの部品を受け取り、ベルギーのハーレンで組み立てた。欧州仕様車には、最高出力130psを発生する3.2L直列6気筒エンジンが搭載された。

ルノー・ランブラー(1962年)
ルノー・ランブラー(1962年)

しかし、ランブラーは購入、登録、維持にかかる費用が高すぎるため、フランスでも販売が振るわなかった。また、今にして思えば、そのあからさまにアメリカンなデザインも消費者に好まれなかったのだろう。シャルル・ド・ゴール大統領は、公用車として装甲仕様のランブラーを導入することを拒否したと伝えられている。

ルノー16(1965年)

ルノーは、ランブラーの失敗をすぐに悟った。そこで、才能あるデザイナー、ガストン・ジュシェ氏に、欧州の消費者に受け入れられる新しい高級車のデザインを依頼した。ジュシェ氏は3ボックスのシルエットを捨て、フラットなトランクリッドではなく実用的なハッチを備えた2ボックスのスタイルとした。そして、ルノーの3、4、エスタフェットで既に採用実績のある革新的な前輪駆動方式を採用した。

1960年代初頭に実験的なクーペとセダンのバリエーションが作られたが、量産化には至らなかった。しかし、『16』のハッチバックはオートマチック・トランスミッション、燃料噴射装置、パワーロック、パワーウィンドウなどの豪華装備を揃え、1965年に発売。1967年にランブラーが生産終了となった後、ルノーのラインナップの頂点に君臨した。

ルノー16(1965年)
ルノー16(1965年)

ルノーは16の後継車として20を投入し、さらに30を上位モデルとして位置付ける計画だった。両モデルは1975年にデビューしたが、16は1980年まで販売が続いた。総生産台数は180万台を超え、米国を含む数十か国で販売された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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