異次元の才腕ミドシップ マクラーレン・アルトゥーラ:ベスト・ドライバーズカー賞 AUTOCARアワード2025

公開 : 2025.07.30 19:05

2024年後半から2025年前半で、各カテゴリーのベストを称えるAUTOCARアワード スーパーカーからコンパクトカーまで、各部門を制した栄えあるモデルは? UK編集部が5台を選出

初期不良へ悩まされた2022年

マクラーレンアルトゥーラへ初めて試乗したのは、2022年。まだ開発が完了しておらず、初期不良へ悩まされていた。そのプレス向け発表会では、燃料ホースが適切なトルクで固定されておらず、不運にも火災が発生している。

筆者の試乗車は、メーターパネルで警告灯が不安定に灯り、冷却系統は不調。走行中に煙が立ち上がり、コース上で止まらざるを得なかった。インタークーラーの内部コアが正しく組み込まれていないという、製造上の不備が原因だったらしい。

マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)
マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)

しかしプレス発表会の後、マクラーレンの技術者は驚くべきスピードで問題へ対処。自動車メディアには、丁寧な情報開示もあった。サプライヤー側の不備も含めて。

上昇したドラマチックさとダイナミックさ

かくして、量産仕様のアルトゥーラには、改良された冷却システムが載っている。また最新仕様は小変更を受け、パワーアップも果たしている。アダプティブダンパーとエンジンマウント、エグゾーストシステムにも手が加えられた。

バルクヘッド部分には、エンジン音を反響させるサウンドシンポーザーを実装。V6エンジンの美しい響きを、存分に鑑賞できるようにもなった。その音色は、どこかポルシェ911にも似ている。

マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)
マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)

アルトゥーラは、2022年の英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権へノミネート。惜しくも優勝は逃したが、素晴らしい走りに魅了されたことは間違いない。

その後、少変更を経たことで、2024年のBBDC選手権へ再び登場。上昇したドラマチックさとダイナミックさで、見事に優勝を掴むこととなった。

マクラーレンの最高傑作

アルトゥーラは、ミドシップのスーパーカーでありながら、能力の幅が異次元。週末の壮大なドライブだけでなく、毎日の通勤や、夕方の買い物にも問題なく対応できる。市街地でも快適で、扱いやすく、つい些細な用事でも乗りたくなってしまう。

それでいてサーキットでは、唯一といえる、精緻な操縦性と出色の動力性能を披露する。ステアリングホイールやペダルには鮮明なフィードバックが伝わり、ドライバーとの一体感は他に類を見ない。

マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)
マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)

アルトゥーラは、2024年のBBDC選手権のノミネート車両で、群を抜いていた。トラブルとともに登場したかもしれないが、今ではマクラーレンの最高傑作と呼んで良い。信頼性や誠実さが評価を飛躍させることを、証明した結果ともいえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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