ポルシェのSUVへ望むモノは? マカン・エレクトリック(1) 電動化1歩進めるハード概説

公開 : 2025.09.11 19:05

ポルシェの電動化を1歩進めるマカン ベースはシングルの339psで後輪駆動 カイエンと近い雰囲気の内装 グレード問わず普段使いで高い満足感 乗り心地と操縦性がバランス UK編集部が試乗

ポルシェのSUVへ何を望むのか?

ポルシェのSUVには、何を望むだろう。クラスをリードするパフォーマンス? ゆとりある車内空間? 長距離クルージングの快適性? ミドシップのケイマンを諦めても、後悔しない運転の楽しさ? 恐らく、そのすべてではないだろうか。

バッテリーEVの進化は着実に進んでいるが、航続距離や車重、操縦性といった面では、まだエンジンモデルを超えてはいない。新しい電動のマカンが対峙するのは、暫くの間併売される、従来のマカンだといえる。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

AUTOCARでは、マカン・エレクトリックへ何度か試乗している。既にご存知な読者も少なくないかと思うが、改めてハードをおさらいしてみよう。

プラットフォームは、アウディと共同開発されたPPE。駆動用バッテリーは、グレードを問わず95.0kWhで、急速充電は最大270kWまで。実際は135kWまでだが、バッテリーを2セグメントに分けることで、倍の速さでの回復を可能としている。

ベースグレードはシングルの339psで後輪駆動

駆動用モーターは、試乗したベースグレードでシングルの339ps。インバーターと一体の小さなユニットで、リア寄りに搭載される。それ以上の仕様ではツインモーターになり、最高出力はマカン 4で387ps、4Sは449ps、ターボでは585psへ上昇する。

ツインモーターのマカンの場合、駆動用モーターはひと回り大きくなり、サブフレームと一体化。ポルシェ・トルクベクタリング・プラス対応のデフも実装される。重量配分は、シングルモーターのマカンで46:54。車重は、実際の計測で2262kgだった。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

サスペンションは、後輪駆動版ではスチールスプリング。オプションで、エアスプリングと後輪操舵システムを装備できる。

今回の試乗車は、20インチという、マカンでは控えめなミシュラン・パイロットスポーツEV タイヤを履いていた。ロンドンを観察する限り、22インチの方が主流のようだ。

カイエンと近い雰囲気のインテリア

インテリアは、ポルシェ・カイエンの雰囲気と近い。メーター用モニターは12.6インチで、カウルがなく、ダッシュボードの正面には2面のモニターが自然に収まる。中央は10.9インチのタッチモニター。助手席側はオプションだ。

内装は上質で、前席の空間に不足はなく、運転姿勢はSUV全体で評価しても最上位に入るだろう。座面は相当に低くもできるし、高くもできる。18ウェイのスポーツシート・プラスは、望ましいオプション。ポルシェらしいデザインで、座り心地は素晴らしい。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

センターコンソールには、操作性の良い一連のハードボタンが並ぶ。ツヤツヤなプラスティック製パネルの面積が、大きすぎるように思えるが。エクステンデッドレザー・パッケージの指定で、高級感を増すことができる。

エンジンで走るマカンより、ホイールベースは96mm長い。その結果、後席側の空間は僅かに拡大しているが、同じ価格帯のEVで広い側にはない。荷室は大きく、メルセデス・ベンツEQE SUVに匹敵する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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