やっぱりシンプルがベスト ポルシェ・マカン・エレクトリック(2) 普段の走りで高い満足感

公開 : 2025.09.11 19:10

ポルシェの電動化を1歩進めるマカン ベースはシングルの339psで後輪駆動 カイエンと近い雰囲気の内装 グレード問わず普段使いで高い満足感 乗り心地と操縦性がバランス UK編集部が試乗

グレード問わず普段使いで高い満足感

ポルシェ・マカン・エレクトリックは、グレード問わず普段使いで満足感の高い走りを享受できる。ステアリングホイールの重さや反応、アクセルペダルの踏み心地とパワー感、引き締まった姿勢制御で、ブランドらしい一体感が醸し出されている。

電動パワートレインの進化で、ランボルギーニウルス級の動力性能を与えることが大変ではなくなった。ツインモーターのマカン・ターボ・エレクトリックは585psを発揮し、0-100km/h加速を3.5秒で処理するが、一般的には過剰な速さといっていい。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

むしろ、シングルモーターでも不満はないはず。ローンチコントロール時は360psまで上昇し、0-100km/h加速は5.2秒。50km/hから110km/hまでの中間加速も、4.2秒ほどで処理する。V6エンジンのような、味わいの濃さはないとしても。

アクセルの反応は自然で精緻。スポーツ・モードを選んでも、意図せず急加速を誘うことはないだろう。

乗り心地は硬め 乗り心地と操縦性がバランス

回生ブレーキは、パドルなどで調整できない。デフォルトは惰性走行を許し、回生を有効にしても減速感はエンジンブレーキ程度。240kWで電気へ変換するには、ブレーキペダルを踏む必要がある。そのかわり反応は漸進的で、ペダルの感触は好ましい。

乗り心地は、20インチ・ホイールでも、BMWのMスポーツ並みに硬めだった。荒れた路面では、2.2tに迫る車重も僅かに実感させる。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

それでも、乗り心地と操縦性のバランスは素晴らしい。ステアリングの反応はスムーズで、反応も軽快。挙動は予想通りといえ、ある程度のボディロールを許し、シャシーとの意思疎通を図りやすい。荷重移動やバランスの変化を、感じ取りやすいからだ。

速度域が上昇すると、鮮明で機敏な旋回性が顕になる。乗り心地にも、しなやかさが出てくる。ハイパワーなツインモーター版では得難い、同社のスポーツカーへ通じる遺伝子を受け継ぐと、シングルモーター版は感じさせる。

後輪駆動版はプロのダンサーのよう

テストコースを攻めてみたが、胸が打たれた。アクセルペダルを僅かに傾けた状態でコーナーへ飛び込めば、安定したアンダーステア。その後パワーを加えると、狙い通りにオーバーステア。後輪駆動のマカンは、プロのダンサーのようだ。

例えるなら、ヒョンデアイオニック5 Nの対極にある運転体験といえる。興奮度は低いかもしれないが、洗練度が高く、クリアなフィーリングを堪能できる。第一印象は物足りないと感じても、時間とともに味わい深さへ気付ける。

ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)
ポルシェ・マカン・エレクトリック(英国仕様)

このマカンに、機械式LSDと回生ブレーキ用のパドル、数10psのパワーアップを与えれば、走りの魅力度はぐっと高まりそうだ。それには、マカン Tと命名したい。

サスペンションは、マカンでは必ずしもエアスプリングでなくていい。アダプティブダンパーとスチールコイルのペアでも、揺れは不快なほどではないはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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