マツダEZ-60のコンセプト『創(ARATA)』デザイナーに聞く!未来の魂動デザインとは【来たるEV時代に向けて】

公開 : 2025.09.22 11:45

マツダは昨年、『創(ARATA)』というコンセプトを北京モーターショーで発表。その市販モデルが同じく北京で『EZ-60』として登場しました。そんなARATAについて、マツダデザイン本部の木元英二さんに内田俊一がインタビューします。

動くことへの感動は常に変わらない

マツダは昨年、『創(ARATA)』というコンセプトモデルを北京モーターショーで発表。その市販モデルが同じく今年の北京モーターショーで『EZ-60』として登場した。長安マツダとBEV協業車で、EZ-6に続いて2台目となる。

このベースとなったARATAについてマツダデザイン本部の木元英二さんに話を聞くと、マツダとしてのデザインの取り組みが見えてきた。

昨年の北京モーターショーで発表されたコンセプトカー『創(ARATA)』。
昨年の北京モーターショーで発表されたコンセプトカー『創(ARATA)』。    マツダ

そもそもマツダは、クルマを通じて人々にポジティブな活力を与え、『前向きに今日を生きる人の輪を広げる』ことを目標にクルマ作りをしている。デザインも、『動くことへの感動』や高い品質などを通じてそこを目指し、ときめきのあるデザインを志している。

それはARATAも同じで、「電動車だからとか、中国市場は特殊だからとかいう話はありますが、その目標は同じ」と木元さん。

その上でマツダ・デザインは動くことへの感動を、それぞれの時代に即した表現で実践。そこには大きくふたつの流れがある。ひとつは艶(エン)と凛(リン)という日本の美意識の伝統に基づいた進化で、コンセプトカー『ビジョンクーペ』が代表格だ。

もうひとつは時代の要請に応えるようにモダンストリームを加えて、より幅広い表現を行う実験的なもので、魂動デザインの幅を広げて新たな価値を模索する役目を負っている。市販車では例えば『MX-30』や『CX-50』がそれにあたり、ARATAとEZ-60はこのモダンストリームの流れだ。

「電駆という新しい駆動方式で、クルマとの新しい関係を期待する人たちに、新しい生活を予感させるクルマを魂動デザインで表現したモデルがARATAです。マツダとして新しい旅立ちに相応しい名前として、『創(ARATA)』と名付けました。未来に向けてマツダが新しいものを(長安マツダと)共創し、新たな1歩を踏み出したことを表現しています」

未来のクルマのアピアランスを

ARATAのデザインテーマは『ソウルフル+フューチャリスティック×モダン』。

「マツダが新エネルギー駆動時代に向かうにあたり、日本の伝統美に裏打ちされた魂動のソウルフルなデザインと、最近の中国NEV(新エネルギー)車に代表される未来的なモダンデザインを融合させ、それが日本から出て来た新しい魅力的な選択肢になること」がそこに込めた思いだ。

マツダデザイン本部の木元英二さんに、ARATAについてインタビュー。
マツダデザイン本部の木元英二さんに、ARATAについてインタビュー。    内田俊一

サイドシルエットは人間中心を表現するデザイン構成としながら、「未来的な『ロング&スリーク』シルエットにしました」と木元さん。分厚いドア断面と4 つのタイヤにしっかりとトラクションがかかるような立体構成は、魂動デザインらしい力強いダイナミックさを感じさせる。

ARATAはエンドピラー(Dピラー)周辺に大きな特徴がある。シンプルで張りを感じる面を前後でシャープに切り取ったモダンな造形としたうえで、この内側を空気が流れることにより整流効果を生み出し、「機能と美しさ、未来感を兼ね備えたものになっています」。

こういったエアロダイナミクスは、電駆車にとって特に高速域で電費を稼ぐために重要な手段だ。そこでARATAとEZ-60には、ボディ各所にエアロデバイスが組み込まれている。例えば、「フロントエンドのボンネット先端や、バンパー両サイドにもエアトンネルを設けてエアロダイナミクスの向上を図っています」と木元さん。

これはシグネチャーウイングの下にあるエアインテークも同じ考えだ。エンドピラー部分と連動し左右別々に開閉するもので、高速域の電費とともにコーナリング特性も向上させる狙いもある。

そしてこれらのアイテムは、「空力特性を上げるだけでなく、来るべき電駆時代以降の、未来のクルマのアピアランスを予感させるものとして採用しています」と理由づけた。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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