【連載:遠藤イヅルのB11型日産サニーカリフォルニア再生&快適化計画】#4 そもそもどんなクルマ?B310型やB12型とも比較

公開 : 2025.10.31 12:05

過渡期のクルマが持つ特有の魅力

1983年にはマイナーチェンジを受け、各部を変更。驚きなのは、この時に3ドアハッチバックが追加されたことです。いわゆる初代FF『赤いファミリア』のヒットを受けての対応でしたが、なんと2ドアクーペを廃止しての入れ替えでした。

たった2年で新規ボディバリエーションの追加なんて今では考えられないですが、そういえば1990年代、マツダも『ファミリア』で『ネオ』を廃止して、フツーのハッチバックを出していましたね。フロント部もほぼ一新していたので、あっちのほうがスゴかったかも(笑)。

5代目サニーカリフォルニア(筆者所有)の空調とラジオ。薄ぼんやりと周波数のメモリを照らすプッシュボタン選曲式のラジオが懐かしいです。
5代目サニーカリフォルニア(筆者所有)の空調とラジオ。薄ぼんやりと周波数のメモリを照らすプッシュボタン選曲式のラジオが懐かしいです。    遠藤イヅル

そんな5代目を眺めていて面白いなと思うのが、1970年代後半と1980年代の過渡期に生まれたクルマということ。丸みがあるボディ、フラッシュサーフェス化されていない窓周り、車体と一体化しきれていないバンパー、フェンダーミラーがデフォルト設計、横から照射するメーター、プッシュボタンで選曲するラジオ、ほぼゼロの電動装備などに1970年代らしさを残しつつ、広い室内、実用に足る空調(エアコンだけなく、換気性能も良い)、そこそこに高い静粛性と操縦性により、現代の路上でもさほどストレスなく乗れる1980年代のクルマの美点も兼ね備えています。

古すぎず新しすぎないという絶妙な頃合いは、このモデルに限らず、1970年代後半から急激な進化を遂げた1980年代を跨ぐ『過渡期のクルマ』の魅力だと感じています。

あらゆるモノコトが大きく進化した時代

そして昭和60(1985)年、カクカクボディの通称『トラッド・サニー』こと6代目(B12型)にバトンタッチ。5代目の技術を継承していましたが、その進化は劇的。ボディ剛性および防錆性能アップ、各部の品質向上などが行われ、大幅なブラッシュアップを果たしました。

5代目の頃は上位モデル『ブルーバード』との差別化などから徹底してパワー系装備が与えられていなかったのですが、時代の趨勢もあり、6代目ではついに上級グレードでパワーステアリング、パワーウィンドウ、集中ドアロックなどを標準化。サニークラスにも『フル装備』の時代が到来しました。

昭和56(1981)年と昭和62(1987)年のカタログを比較。6年でここまで変わるか、というくらいの洗練ぶりです。
昭和56(1981)年と昭和62(1987)年のカタログを比較。6年でここまで変わるか、というくらいの洗練ぶりです。    遠藤イヅル/日産自動車

1987年にはマイナーチェンジで内外装に変更を受け、この時の外観の変化は『洗練』と言って良いものでした。それはカタログにも表れていて、6代目後期型のカタログは今の視点でもさほど古さは感じません。5代目前期と比べると、違いは明らか。その差はたった6年です。6年でこんなに変わるものなのか!

この傾向はクルマに限らず、建物、音楽、映画、グラフィックデザイン、アニメ、特撮など、1970年代後半〜1980年代における身の回りのものすべてに感じられます。

例がアニメで恐縮ですが、『機動戦士ガンダム』の放送は昭和54(1979)年で、続編の『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』は昭和60(1985)年です。前者はいささか絵に古さがありますが、後者のセルの塗り方などは、現代でも驚くレベルのときもあり、メカデザインを見れば古さは皆無かも。こちらもたった6年で何があった!? と、40年経った今、思うのでありました。

ということで、マニアックな内容で失礼しました。需要あったかな……(笑)。次回は再生&快適化に戻る予定。お役に立てる情報をお出しできるかと思います。

(当連載は不定期掲載ですが、主に金曜日お昼頃に公開予定となります)

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    遠藤イヅル

    Izuru Endo

    1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター兼ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持つ。コピックマーカーで描くアナログイラストを得意とする。実用車や商用車を好み、希少性が高い車種を乗り継ぐ。現在の所有は1987年式日産VWサンタナ、1985年式日産サニーカリフォルニア、2013年式ルノー・ルーテシア。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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