そのデザインに『らしさ』はありますか? フェラーリ・ルーチェ論争に思うこと【森口将之の『もびり亭』にようこそ 第21回】

公開 : 2026.06.10 12:05

嵐電に24年ぶりの新型車導入

鉄道車両はクルマに比べると圧倒的に製造台数が少ないので、前面や車内、塗装などで個性を出すよう、運行会社がデザイナーに依頼するパターンが主流です。

ここでは京都市の嵐電(京福電気鉄道)に昨年、24年ぶりの新型車として導入された『KYOTRAM』を紹介しましょう。

嵐電KYOTRAM
嵐電KYOTRAM    森口将之

こちらは先月下旬に大阪で開催されたRDEフォーラムでデザイナーから説明がありましたが、昔の欧州の路面電車をヒントにした丸い先頭部で、100年以上走り続けている歴史を伝え、人と近い場所にいる路面電車なので、ライトも丸にして柔らかさや愛らしさを表現したそうです。

それでいて今の京都には新しい建物もあるので、レトロモダンな雰囲気に仕上げ、他の嵐電車両にも使われている京紫色をまとわせたとのこと。いろいろな部分から京都らしさが伝わるし、街中をゆっくり走る車両にふさわしい優しさが感じられました。

ルーチェにフェラーリ『らしさ』は?

ここまで書いてきて、ルーチェに対する巷の評価が理解できたような気がしました。

僕はアップルの初代iMacを今も持っていて、iPhoneは最初の3Gから使い続けているぐらいなので、ルーチェをデザインしたジョナサン・アイブは尊敬しています。でも彼の個性が前面に出ていて、多くのフェラーリが備えていた、血湧き肉躍るような情熱や色気が影に隠れてしまっている感じがするのです。

フェラーリ・ルーチェ
フェラーリ・ルーチェ    フェラーリ

とはいえ、イプシロンやスヴァルトピレンのように、ブランドにとっての新しい1ページを切り開いたという見方もできます。もう少し長い目でジャッジを下すべきではないかという気もします。

ただ、フェラーリだからなんでも褒めるという時代は、終わりを迎えつつあることも事実。それはデザインにとって良いことだと思っています。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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