なぜEVで「疑似変速」が採用されるのか(前編) 高性能車の新たなトレンド? ギアとエンジンの動きを再現

公開 : 2026.06.11 17:25

ターボエンジンの合成サウンドと連携

アイオニック5 Nは、2235kgという車重の割にかなり機敏で俊敏な走りを見せ、AUTOCAR UK編集部も詳細テストの後に最高評価の5つ星を付けている。N eシフトは、「Nアクティブ・サウンド+」システムと連携し、アップシフトやダウンシフト、車体に伝わる意図的な振動に合わせて、驚くほどリアルなターボチャージャー付き4気筒エンジンのサウンドを再現する。

不思議なことに、これら2つの技術は異なるチームによって開発されたものだが、明らかに強い関連性が見られる。

ヒョンデ・アイオニック5 N
ヒョンデ・アイオニック5 N

アイオニック5 Nは8000rpmのリミッターまで熱狂的に「ウァン、ウァン、ウァン」と回転数を上げ、素早く3速に入れなければ、コーナーの途中で見えない壁に押し付けられたかのように、2速へのダウンシフトの効果を体と耳で感じることになる。

N eシフトは、自分の仕事に情熱を注ぐ人々による優れた発明のように感じられる。このクルマの全体的なダイナミクスを巧みに反映した技術だ。

グリップ力が高く、バランスが整った四輪駆動のメガ・ハッチバックだが、比較的控えめな操作でもタイヤを滑らせ、手の中でステアリングホイールを激しく揺れ動かすことができる。

追い込めば追い込むほどその感覚は高まる。他のEVが本気を出せば出すほどフラストレーションを感じさせるのに対し、このクルマの魅力はそのような状況下でこそ結晶化する。筆者の同僚たちのレポートによると、セダンの『アイオニック6 N』ではN eシフトのチューニングが改良され、そのダイナミズムをさらに研ぎ澄ませているという。

ブランドごとに独自のセッティング

「ヒョンデは、『おいおい、そんなの理にかなってないぞ』と経営陣に言われることなく、思う存分遊ばせてくれる素晴らしい会社です。何よりも楽しむこと、それが明確な戦略です。わたし達にとっては素晴らしい遊び場なのです」とアイヒラー氏は言う。

では、きょうだいブランドのキアジェネシスはどうだろうか。これらのブランドもまた、一部のスポーティなEVに疑似変速を採用している。

キアEV9 GT
キアEV9 GT

「わたし達は常に彼らとコンタクトを取り合っています。当然、ソフトウェアのロジックは共有していますが、具体的にどのロジックを採用するかは、常に各チームの判断に委ねられています」

ヒョンデのN部門では今後もこの技術のより過激なチューニングを展開していく方針だが、兄弟ブランドからも目が離せない。キアの新型『EV9 GT』は、最大8速、7200rpmまで対応する「バーチャル・ギア・シフト(VGS)」システムを採用した、ユニークかつ豪華な電動SUVだ。ドライバーに馴染みのある感覚を提供し、率直に言えば純粋なエンスージアスト向けではないこのクルマにも、新しい魅力が宿っている。

ジェネシスの『GV60』や『GV70』では、システムをバックグラウンドで自動モードのまま稼働させておくのが良い。ずんぐりした電動SUV特有のピッチングやヒービング(上下の揺れ)、ひいては車酔いの可能性がある程度抑えられているからだ。

一方、よりスポーティな『GV60マグマ』は、V6エンジンを彷彿とさせるサウンドに合わせて、9000rpmのレッドラインが設定される予定となる。

(翻訳者注釈:この記事は「後編」へ続きます。)

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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