【現役デザイナーの眼:カイエン&マカン】EV時代のポルシェ・デザインとは? 911という絶対アイコンの表現方法

公開 : 2026.06.11 11:45

クーペ的ルーフラインのマカン

EV版『マカン』、最大の特徴はルーフラインです。

従来、ルーフ後端はスポイラーにつながっていました。このルーフスポイラーはデザイン的にも重要で、後ろに抜けたデザインになりシルエット全体に勢いがつくんですね。

ポルシェ・マカンのリアビュー。ルーフスポイラーがなく、クーペライクなシルエットに進化しました。フェンダーの張り出しと大径タイヤで、スタンスの良さはまさにポルシェです。
ポルシェ・マカンのリアビュー。ルーフスポイラーがなく、クーペライクなシルエットに進化しました。フェンダーの張り出しと大径タイヤで、スタンスの良さはまさにポルシェです。    ポルシェ

クルマのキャラクターはルーフラインで決まると言えますが、ルーフスポイラーがあると特にスポーティな表現がしやすいんです。このようにデザイナーとって重要なものである一方、空力を考えるとリアゲートの角度次第でスポイラーなしの方が性能が高くなります。

中にはトヨタbZ4Xなど、デザインと空力の折衷案なのか真ん中が繋がっていないスポイラーのクルマもあります。今回マカンではスポイラーをなくし、クーペライクなシルエットを選択しました。これは日産リーフと同じで、空力を最大限考えたシルエットなのだと思います。

ずっとスポイラーが付いているマカンを見慣れていたので、初見はなんとなく違和感があったのですが、911のフォルムに近づいたと思えば納得できます。後席の居住性も確保されたシルエットなので、難易度が高かったことでしょう。

一方、ポルシェらしいスタンスの良さは健在で、従来よりさらに踏ん張り感を強調しているようにも思います。

911を起点に考えた結果としてグリルレスを選択

顔まわりも興味深いポイントです。カイエン同様、EVらしく開口部の少ないグリルレスのフロントバンパーとなり、全体的にやや優しい表情になりました。

EV時代のフロントデザインは、各メーカーで考え方が分かれています。BMWのようにグリルを小さくしながら残すメーカーもあれば、メルセデスのように逆に強く主張するメーカーもあります。

マカンはEVらしく開口部の少ないグリルレスのフロントバンパーとなり、全体的にやや優しい表情に。
マカンはEVらしく開口部の少ないグリルレスのフロントバンパーとなり、全体的にやや優しい表情に。    ポルシェ

そんな中でポルシェは、911を起点に考えた結果としてグリルレスを選んだのでしょう。高級車こそ優しい顔の方が上品だと感じますが、迫力を求める人には少し物足りなく映るかもしれません。

ポルシェのデザインするのは難しい

前述のとおり、ポルシェのデザインといえばカーデザイン界最大のアイコンである『911』のイメージが、全てのラインナップに踏襲されています。

丸目ヘッドライトから始まるフロントまわりの造形、なだらかに落ちるリアシルエットなど、全体的に丸みを帯びていた1960年代から通ずるクラシックなデザインを現代でも全ラインナップ一貫して採用。こんなメーカー他にないですよね。

ポルシェ・カイエンのフロントビュー。割と直線的なディテールですが、全体的に丸みのあるシルエット、ヘッドライトから始まるフロント立体構成などが、ポルシェそのものです。
ポルシェ・カイエンのフロントビュー。割と直線的なディテールですが、全体的に丸みのあるシルエット、ヘッドライトから始まるフロント立体構成などが、ポルシェそのものです。    ポルシェ

全ての車種で911を表現しないといけないのは難しいもので、ポルシェ初めてのSUVである初代カイエンでは少し異質なデザインに見えました。

まず、四角いもの(パッケージ)を丸く見せる(911風)のは大変なんです。しかし、代を重ねるごとに洗練され今ではポルシェを代表する車種になったことは、デザインの力だと言えるでしょう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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