「1000馬力=1000頭の馬」はただの空想! 馬力に関する不都合な真実 炭鉱とフェラーリの話【UK編集部コラム】

公開 : 2026.06.25 17:05

現実に即したものではないが…

18世紀の醸造所での1日の労働時間が正確にどれほどだったかは定かではない。しかし、例えばランドローバーディフェンダー・オクタに、エンジンを最大負荷まで追い込むために必要なバラスト(ずんぐりした砂袋をいくつも積んだトレーラーを想像してほしい)を満載するとしよう。そのディフェンダーをオーバルコースで全開走行させ、3速か4速で6000rpmを一定に保ち、8時間、10時間、あるいは12時間もぶっ通しで走らせてみるのだ(巧妙な空中給油システムも想像する必要があるだろう)。

史上最高峰のエンジニアリングを駆使したとしても、何が起きるかは想像に難くないだろう。そう長くはかからず、エンジンは非常に高温になり、故障し、おそらくは炎上してしまうはずだ。言わずもがな、これは現代の自動車エンジンの限界を確かめるのに公正なテスト方法ではない。自動車はそもそもこのような働き方を求められていないし、当然ながらそのように設計されているわけでもない。

フェラーリに炭鉱で一日中石炭を運ばせたくはない。
フェラーリに炭鉱で一日中石炭を運ばせたくはない。

だからこそ、1000頭の純血種からなる目に見えない馬のチームがフェラーリF80を引っ張るというイメージは、どれほどロマンチックに見えても、結局のところ、多くの点で単なる空想に過ぎないのだ。自動車のエンジンについては、これまで出力に関して独自の基準が設けられるべきだった。ただし今後は、そのような基準が決して設けられないことを願うばかりである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事