「無名」ブランドから躍進 BYDが自動車業界の根本を変える ボノ・ゲ氏:英国リーダー賞 #AUTOCARアワード2026

公開 : 2026.07.09 17:25

オープンマインドの英国消費者

最初に試みたのは、スペインのテストコースにさまざまなBYD車を持ち込み、ディーラー(特にディーラーグループの責任者)を招待して試乗してもらうことだった。反応はおおむね好意的だったが、学ぶべきことが山ほどあることに気づいた。まず流通や規制対応が複雑な課題として立ちはだかった。また欧州の消費者は、後部座席が広すぎ、トランクスペースが狭すぎると感じた。中国人が慣れ親しんでいるデジタル機能にも戸惑いの声が上がった。設計改良が必要だった。

欧州は単一の市場ではなく、最大30もの販売地域に分かれており、クルマの仕様も地域ごとに変える必要があった。国によっても需要は異なっていた。ディーラーは、BYDがどのようにブランドを構築していくのかを知りたがっていた。

BYDドルフィン
BYDドルフィン

「BYDは、誰も聞いたことのない最大のブランドでした」とボノ・ゲ氏は振り返る。

「テレビCMも少し流しましたが、何よりもまず、見つけられる限りのデータを収集することに注力しました。また、有益なアドバイスに耳を傾けるよう努めました」

ボノ・ゲ氏によると、周囲からは「英国市場は欧州で最もオープンだ」と繰り返し言われていたが、実際その通りだったという。

「英国に来てみると、多くのアジア企業がここに本社を構えていることに気づきました。その理由は明らかでした。消費者はオープンマインドで、新しいものに興味を持ち、コストパフォーマンスに魅力を感じています。ドイツやフランスではそう簡単にはいきません」

大きな期待が寄せられるデンツァ

BYDの英国事業は過去3年間で爆発的な拡大を見せているが、ボノ・ゲ氏はまだ改善の余地がかなりあると感じている。130か所あるディーラーネットワークは、より迅速に拡大する必要があるのだ。ボノ・ゲ氏と、中国国外のBYD事業全体を統括する上司のステラ・リー氏は、今年末までに英国国内で160か所のディーラー網を整備することを目指している。

「とはいえ、適切なストーリーを伝えることは、かなりうまくやれたと思います。人々はわたし達をテクノロジーブランドとして認識してくれています」

デンツァZ9 GT
デンツァZ9 GT

これからも多くの課題が待ち受けている。最も重要な課題の1つは、高級車ブランドのデンツァ(騰勢)の立ち上げだ。ポルシェタイカンと競合する『Z9 GT』はデビューを間近に控えており、今年中にさらに2車種が追加される可能性もある。

ボノ・ゲ氏によれば、デンツァはBYDにとって、フォルクスワーゲンにおけるアウディのような存在であり、その販売台数は相当な規模になる可能性があるという。さらに、その先には別の高級車ブランド、ヤンワン(仰望)の展開も視野に入っているが、2026年に同ブランドが英国市場に投入されるかどうかは現時点では不明だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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