比較試乗 アストン マーティンV12ヴァンテージ vs ポルシェ911 GT2 前編

公開 : 2018.05.06 08:10

走り重視のV12ヴァンテージ

もっとも、ひと走りしてもなにも違いを見いだせないほど凡庸なクルマでは決してない。おそらく走り始めて数メートルで、少なくとも走行性能に関しては、V12ヴァンテージはDBSに欠けているものすべてを備えているのが感じ取れるはずだ。

俊敏で引き締まったフィールと、そして言うまでもなく凄まじい速さは、別に限界まで攻め込まなくてもすぐに実感できる。V12ヴァンテージに短時間でも乗れば、DBSは好意的に見ても走りに対してストイックさが足りないと、もしくは厳しい表現をするなら余計な贅肉が多すぎると感じられてしまう。

価格にしても、3320万円のDBSより2700万円のV12ヴァンテージのほうが、ショールームで見たときの満足感ははるかに強い。それはV12ヴァンテージをこの広報車を含めてもわずか1000台しか生産しないとアストンが発表しているという事実が頭に入っていればなおさらだ。

このV12ヴァンテージを世に送り出したためにアストンがどんなジレンマを抱えることになるかはわからないが、明確にわかることもある。すなわち、このクルマは臆病者には適さない。真に豪胆な心臓を持ったドライバーのためのマシーンだ。

その点では明敏な読者ならもうお察しのように、1970年代末から1980年代初期の名車、堂々たるフロントスポイラーとスモールランプが印象的だった初代V8ヴァンテージの血を受け継ぐ正統な末裔なのは間違いない。

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