【詳細データテスト】BMW 5シリーズ 高い完成度 動力性能と燃費を高次元で両立 個性は不足気味

公開 : 2021.10.30 20:25  更新 : 2021.11.05 02:40

走り ★★★★★★★★☆☆

545eの速さを、ほかのパフォーマンスサルーンとの比較でポジションづけしようというなら、興味を惹きそうな対象を引き合いに出してみよう。1998年のスーパーサルーン、E39世代のM5だ。温暖な日のドライ路面で計測した545eの加速性能は、0−97km/hも、0-161km/hも、そしてゼロヨンも、コンマ1秒ほどしか差がなかったのである。

つまり、545eは決して遅くない。しかし同時に、かつてのM5ほど心を惹く、感情剥き出しで自己主張の強さを感じさせるクルマでもない。

エモーショナルな部分はともかく、加速性能は伝説的なE39型M5に迫るほど。直6のサウンドも悪くないが、充電を欠かさず、街乗りが多いと、その音を楽しむ機会は減ってしまう。
エモーショナルな部分はともかく、加速性能は伝説的なE39型M5に迫るほど。直6のサウンドも悪くないが、充電を欠かさず、街乗りが多いと、その音を楽しむ機会は減ってしまう。    LUC LACEY

直6エンジンはたしかに、朗々たる甘美なサウンドが存在感を主張するが、それを味わえるのは、おそらく走らせている間の半分ほどにとどまる。よほど長距離移動ばかりか、充電をめったにしないのでない限りは。

ドライバーズシートで聞くエンジン音は、ややデジタル的で人工的なものを感じる。しかし、不快感や失望を覚え、ドライビング体験を損ねるほど不自然ではない。

走り出しは、ハイブリッドモードがデフォルト。よほどスロットルペダルを踏み込まない限り、低中速では電力で走行する。デジタル表示のパワーゲージは、エンジンが始動するまでにどれくらい電力を使えるか、わかりやすく表示してくれる。もっとも、しっかり充電して、エレクトリックモードにするのでなければ、それほど長い間ではない。なおパワーゲージは、スポーツモードにすると回転計に切り替わる。

ギアボックスは、EV走行時にもシームレスにシフトチェンジし、ダイレクトに後輪をモーター駆動するのと遜色ないペダル操作へのレスポンスを見せる。しかしながら、電力でもう少し力強く走ろうとペダルを踏み込むと、やや遅れがある。そして、そのギャップを埋めるべく、意図せずエンジンを目覚めさせることになる。

スポーツモードを選ぶと、ほぼ常にエンジンが回り続ける。パドルシフトでマニュアル変速すれば、全般にわたりレスポンスがよくなり、より力強い加速性能を発揮する。それでも加速時には2tのウェイトを感じさせるが、遅い流れの車列から飛び出す勢いは十分に活発で、高速道路では堂々たる走りっぷりだ。

総合的に見て、キャラクターやドラマティックさがあるか、また最新パフォーマンスサルーンに相応しいリアルな加速力を備えているかは疑問の余地がある。しかし、もしスポーツモードを日常的に使うのなら、物足りなく感じることはそうそうないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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