ボルボV60 詳細データテスト 動力性能もEV航続距離も向上 万人受けの運動性 積載性はほどほど

公開 : 2022.10.01 20:25  更新 : 2022.10.04 07:29

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

現行の第2世代V60は、現在のボルボが大きめのラインナップに用いているSPAモデルプラットフォームへ移行した、トラディッショナル系では最後のモデルということになる。登場したのは2018年。アメリカ製の兄弟車であるセダンのS60が欧州市場に上陸する直前のことだった。

技術面の関連性があるSUVのXC90はフルモデルチェンジ間近だが、V60はまだ世代交代から数年しか経っていない。ただし、2023年モデルでマイナーチェンジを実施する予定だ。今回テストしたのは、変更前の2022年モデルである。

フロント横置きのエンジンは前輪を、リアに配置したモーターは後輪を、それぞれ駆動する。より強力なエンジンを積むT8仕様は、現時点のV60には設定されていない。
フロント横置きのエンジンは前輪を、リアに配置したモーターは後輪を、それぞれ駆動する。より強力なエンジンを積むT8仕様は、現時点のV60には設定されていない。    LUC LACEY

全長4.8mをわずかに切る中型ワゴンで、直接的な競合モデルはメルセデス・ベンツCクラス・エステートやアウディA4アバント、ジャガーXFスポーツブレークなどだ。シャシーは多種類の高張力スティールが用いられ、ボンネットの下には4気筒ガソリンエンジンを横置きする。

このメカニズムの構成は、最新のボルボ車では一般的なもので、レイアウトはフロントの衝撃吸収構造を最適化する。なお、ディーゼルエンジンは2021年にすべて廃止されている。

駆動方式はFFと4WDが用意され、トランスミッションは全車ATになった。サスペンションは四輪独立で、フロントはダブルウィッシュボーン+コイル、リアはポリウレタンレジン複合材の横置きリーフを用いたマルチリンクだ。V90XC60とは異なり、V60にエアサスペンションやアダプティブダンパーは設定されていない。

プラグインハイブリッド仕様は、以前のモデルより大幅に容量を増やした駆動用リチウムイオンバッテリーと、やはり大幅にパワーアップした電気モーターを積む。トランスミッショントンネル内に設置されるバッテリーは、パウチセルの数をふたつから3つに増やし、総電力量は11.6kWhから18.8kWhへ増加。実用容量は14.9kWhだ。

これにより、WLTPテストにおけるEV走行距離は伸びている。オプションの選択によって幅はあるが、先代V60のT6リチャージは50〜60kmだったが、現行モデルは76〜87kmをマークする。これはなかなかの意味を見出せそうな改善だ。

改良前のモデルと変わらないのは、252psの1969ccガソリンターボエンジンが、8速ATを介して前輪を駆動すること。後輪は永久磁石動機モーターが直接駆動するが、このモーターは以前の87psから145psへ強化されている。

システム合計出力は350psと公称されているが、トルクは未公表。同じプラットフォームのモデルには、よりパワフルなT8リチャージを設定するものもあるが、V60には用意されていない。そちらはエンジンがより強力なものとなる。

実測した車両重量は2036kgで、スペック表の掲載値を40kg少々上回っている。重いクルマではあるが、このサイズのPHEVワゴンとしては想定内だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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