ボルボV60 詳細データテスト 動力性能もEV航続距離も向上 万人受けの運動性 積載性はほどほど

公開 : 2022.10.01 20:25  更新 : 2022.10.04 07:29

走り ★★★★★★★★☆☆

ボルボのプラグインハイブリッドは、ほかの機会にも述べてきたが、ここのところエンジンの静粛性で飛躍的な進歩を遂げている。ひとつには、ターボとスーパーチャージャーを併用していた4気筒ユニットを、よりシンプルなターボユニットに置き換えたことが理由に挙げられる。それは高出力版のT8でもだ。

また、改良版T6は、エンジンが回っているときでも優れた洗練性を示すが、燃焼を止めている機会が多いことも効いている。

エンジンの静粛性と、電動パワートレインの性能向上は顕著で、とくに後者はライバルに対する大きなアドバンテージだ。ただし、トランスミッションにはドライバーがコントロールできる余地がもっとほしい。
エンジンの静粛性と、電動パワートレインの性能向上は顕著で、とくに後者はライバルに対する大きなアドバンテージだ。ただし、トランスミッションにはドライバーがコントロールできる余地がもっとほしい。    LUC LACEY

V60 T6リチャージは、低速時にはほとんどが電動走行となる。パフォーマンスでもドライバビリティでも、新たな駆動モーターによる違いは明白。ゼロ発進時や60km/h以上の速度域でも、ゼロエミッション走行できるケースが増えた。スロットルレスポンスは爽快かつリニアだが、これは後輪をモーターがダイレクトに駆動するので、ギアボックスによるラグが完全に排除できるからだ。

もっともパフォーマンス志向のモードでは、0-97km/hを4.9秒、0-161km/hを11.8秒で駆け抜ける。今回のようなドライコンディションではなかったものの、メルセデス・ベンツC300eセダンやアウディA6 50TFSIeのテスト結果と比較すれば、どちらもV60のほうがかなり速い。しかも、この結果はボルボの公称タイムすら凌ぐものだ。

とはいえ、V60とライバルとのもっとも注目すべき違いは、電力走行時にみられる。48-113km/h加速が10.8秒というのは、メルセデスの12.4秒やアウディの12.3秒にだいぶ差をつけている。ライバルたちは、エンジンを使わずに走った際、取り立てて活発には感じられなかった。V60が見せたゼロエミッション走行でのレスポンスと元気さは、電動パワートレインのパフォーマンスを重視するドライバーの指示を集める材料となりうる。

ハイブリッドモードで走ると、電動モーターから内燃エンジンへの切り替えがなめらかにいかないケースがあった。しかしながら、スムースに入力し、ほどほどの動力性能を求めている限り、そういうことはめったに起きない。

単にスピードを出すのではなく、もっと積極的にドライビングを楽しもうとすると、このクルマとの一体感はあまり得られないかもしれない。シフトパドルはなく、トランスミッションがスロットルを大きく開けても高めのギアを保つこともないので、選んだギアをキープして走ることはほぼ不可能に思える。

市街地を出て、妥協したドライビングをすると、トランスミッションは完全に接続を絶って効率重視のコースティングをしたがる。再度つながるのはコーナリング中やスロットルペダルの入力に反応したときくらいだが、それがどうにもぎこちない。

適切な状況で使えば、クルージングでの燃費改善に寄与するかもしれない。だが、できる限り自分でクルマをコントロールしたいドライバーからすれば、魅力を損なうものだと思うだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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