ベントレー・コンチネンタルGTC 詳細データテスト 洗練とスポーティの好バランス サウンドも魅力

公開 : 2023.04.29 20:25  更新 : 2023.05.06 09:45

走り ★★★★★★★★★☆

長い間、ベントレーの顧客に説明するのが難しかったことがある。それが、どうして金に糸目をつけず、最高の選択をしたいとしても、わざわざより小さいエンジンを積んだクルマを選ぶ理由だ。

2023年現在、もちろんその考え方は変わっている。それでも、V8 Sが、GTでもGTCでも12気筒より8気筒の方が走らせてより楽しいと、非常に多くのひとびとをじつに早く納得させることができるクルマであることに変わりはない。

W12に劣らぬ速さとスポーティなサウンドを見せつつ、モードを切り替えれば非常に自制も効く。積極的にV8モデルを選びたいと思わせてくれる仕上がりだ。
W12に劣らぬ速さとスポーティなサウンドを見せつつ、モードを切り替えれば非常に自制も効く。積極的にV8モデルを選びたいと思わせてくれる仕上がりだ。    MAX EDLESTON

このV8は、W12よりレスポンスもエモーションもキャラクターも上で、燃費も僅差ながら優れ、しかもほとんど速さに違いがないのだ。

2018年にロードテストを行ったW12の3代目コンチネンタルGTは、今回のV8オープンモデルとほぼ同じ重量で、前後配分は等分からより遠いクルマだった。その加速性能は、0-97km/hがまったく同じ3.6秒で、48-113km/hでも0.3秒速かっただけだ。

結局のところ、6.0LのW12はその融通の効く勢いが一旦立ち上がれば、その力には侮れないものがある。しかしV8 Sのエンジンは、新型スポーツエグゾーストの恩恵ばかりではなく、より使いやすいトルクとキレのよいレスポンス、鋭く回ろうとする性質や有り余る魅力的なサウンドがある。

このクルマのより大きなサウンドを発する走行モードを選ぶと、自分が乗っているのが本当に21万8355ポンド(約3625万円)もするラグジュアリーなベントレーなのか、にわかには信じがたくなる。さもなくば、じつは中身がTVRサーブラウなんじゃないかと思うかもしれない。

その甘美な遠吠えは、スポーツモードでは容赦なく響き渡り、走り去るときには穏やかな破裂音を残していく。すばらしく、また思いがけないほどにアピールしてくれる。

いっぽうで、コンフォートモードではおとなしく抑えが効いている。存在をやたらと主張したり、乗員をわずらわすことは一切ない。ハイパフォーマンスエンジンで、ここまでサウンドに二面性があるものは滅多にない。

動力性能については、高級コンバーティブルにこれ以上を望むことはないのではなかろうか。全長4.9m近く、2.3tの重量がありながら、0−161km/hが9秒未満で、余力も常に十分残している。それどころか、走行中のスロットルへの反応が、W12を上回っている。

8速DCTは、マニュアルモードの変速が素早く、Dレンジでも十分に直観的。しかし、中間ギアをキープし、エンジンのドラマティックなサウンドを楽しむには、トランスミッションをSモードにする必要がある。Dレンジでは、スロットルを抜くとトランスミッションの接続を切ってコースティングをしがちだ。

ベントレーは、夢中になれるスピードよりもスムースさを重視する傾向にあり、それによって取り回し時やリバースに入れる際には、わずかながら反応の遅さがみられる。フラストレーションを感じるほどではないのだが。

ドライ路面でのブレーキ性能は、無償オプションであるピレリのオールシーズンタイヤの影響が多少出た。それでも113km/hからの完全停止は50m以内に収まり、スタビリティも良好で、ノーズダイブも抑えられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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