ボルボ 「うるさい」注意警告を緩和へ 開発者、息子に運転教えた時の”失敗”活かす

公開 : 2023.09.15 18:05

・運転手の注意散漫を監視する機能で、ボルボが新しい「理解システム」提案。
・注意を促す警告の煩わしさを排除することを目指したもの。
・うるさいだけの安全システムは、運転手との信頼を損なう。

警告の煩わしさ排除 運転手との信頼関係

ボルボは、ドライバーの注意力を監視するモニタリング・システムの “煩わしさ” を解消するため、ドライバー・アンダースタンディング・システム(ドライバー理解システム)を市販車に導入すると発表した。新型EVのEX90より搭載される予定だ。

このシステムは2台の車内カメラを使ってドライバーの視線パターンをモニターし、道路から注意が逸れてしまう兆候を早期に検知するというもの。欧州で2024年に施行される自動車安全規制「GSR2」では、さまざまな運転支援機能の装着が義務付けられている。そのため、モニタリング・システムはすでに多くの新車に搭載されているが、感度が高すぎると言われることもある。

ボルボEX90
ボルボEX90    ボルボ

ボルボは、居眠りや酒酔いといった認知機能の低下について、視線パターンをスキャンする独自の技術を用いてデータを収集し、実用的なアプローチを適用することでこの問題の解決を目指している。

ボルボのシニア安全技術リーダーであるミカエル・リュング・オースト氏は、EX90の衝突安全テストの場において「前方を見ている時間は全体の約80%で、それ以外の場所に20%を費やしています」と語り、ドライバーの視線を前方道路に集中させる必要性を強調した。

しかし、「人々は安全に運転する方法を学んできた」とリュング・オースト氏は言う。「不適切」な視線によって衝突事故が引き起こされることは「めったにない」ため、「人々が間違ったことをしているとは言い難い」とのこと。

そのため、ドライバー・アンダースタンディング・システムは、ドライバーの注意散漫によって危険回避のためコンピューターが介入する必要が生じた場合にのみ、警告を発する。システムが作動し続けたり、危険の度合いが高まったりした場合は警告を強化する。

ボルボ・カーズ・セーフティセンターの責任者であるオーサ・ハグランド氏は、息子に運転を教えたときの経験を振り返り、絶え間ない警告がドライバーと安全システムとの信頼関係を壊してしまうことに気づいたと語った。

「最初は『危ない!』と叫ぶばかりで、かなり迷惑なアクティブ・セーフティ・システムでした。息子はすぐにわたしの言うことを聞かなくなりましたね。うるさいだけで、彼の運転がうまくなるわけでもないんです」

「わたし達はそのバランスを見つけなければなりません。よそ見をしていて何かが起こった時、そのような時こそ、わたし達は助けが必要であることを伝えたいのであって、そうでなければ必要ありません。それこそが効果的な安全システムであり、いつでも何でも目についたものを声に出すことではないのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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