極めて正確な運転スタイルが要求される

巨大なウイングで、自己主張するマシンも複数ノミネートしている。アルピーヌA110 Rと、アリエル・アトム 4R、ポルシェ911 GT3 RSという、精鋭3台だ。

いずれもダウンフォースを生成し、セミスリック級のスポーツタイヤを履いている。特に911 GT3 RSは、ル・マン・マシン並みにシリアスな内容にある。

アルピーヌA110 R(英国仕様)
アルピーヌA110 R(英国仕様)

このトリオで、ドライバーの気持ちを掴むのに苦労したのが、アルピーヌA110 R。シビック・タイプRの苦戦と同様に、惜しいことに雨のサーキットとの相性が芳しくなかった。

一般道を見事なまとまりで軽快に駆け抜けたが、冷えて濡れたアスファルトにはうまく対応できない。コーナーの入口では顕著なオーバーステアを示しつつ、出口が迫りパワーを加えていくとアンダーステアへ転じる。

この挙動が、A110 Rの足を引っ張る。9万4990ポンド(約1719万円)という英国価格を踏まえると、1.8L直列4気筒ターボ以上のパワートレインも欲しくなる。

プライヤーは、極めて正確な運転スタイルが要求されたと振り返る。指先で繊細に操るように。さらに、すべてを開放しても充足感はさほど高くない、とも感じたという。筆者も同調する意見だ。

対するアリエルとポルシェは、BBDCでしばしば優勝を掴んできた強豪。アトム 4Rと911 GT3 RSがトップ3へ選出されても、まったく不思議ではない。しかし、暖かく乾燥したコンディションとは真反対のサーキットで、能力を発揮できるだろうか。

信じられないほど運転へ惹き込まれた

911 GT3 RSは、審査員の期待へ応えた。ミーティングルームへ戻ってきた辛口のフランケルから、「この状況でも、2世代前の911 GT3 RSを無力に感じさせるほど」。という言葉を引き出したことが、明確な証拠といえる。

土砂降りのサーキットでは、本来のポテンシャルは発揮できない。だとしても、ポルシェのクーペへ相応しい精度は揺るがない。

ポルシェ911 GT3 RS(英国仕様)
ポルシェ911 GT3 RS(英国仕様)

表面温度が上がらないタイヤと歩調を合わせるべく、むやみにコーナーへは突っ込めない。しかし、様子を探りながらとはいえ、グリップ力は想像以上。フルスロットルへ耐える余裕があることには、驚かずにいられなかった。

「濡れたサーキットで、あのタイヤは充分に機能しませんが、コーナーの侵入を調整すれば大丈夫。信じられないほど運転へ惹き込まれました。より速く、より滑らかに扱えるドライバーになるよう、クルマから促されるように」

というディスデイルの発言へ、プライヤーも賛同する。「圧倒されるほどでもなく、親しみにくいわけでもない。落ち着いていれば、受け入れてくれます」

アトム 4Rも、スーパーカーへ迫る身体能力で深い爪痕を残した。ただし、バプラートは少々過激な特性へ馴染めなかったらしい。「オスのライオンを操っているよう。エキサイティングですが、飛び抜けて楽しいとも感じません」

車重は700kgと軽く、6速MTはシーケンシャル。ブースト圧の波を予想しきれないと、翻弄される可能性はある。ブレーキも、ロックしないよう力の調整が求められた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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