偶然の出会いで決まった出場 アルファ・ロメオ1900でミッレミリアを走ってみた2人(1) 修理は自分で

公開 : 2024.01.14 17:45

クラシックカー・イベントの代表格といえるイタリアのミッレミリア 現実的なアルファ・ロメオ1900を自ら直し、参加した2人を英国編集部が取材

現実的な予算で完走も不可能ではない

現在開かれているクラシックカー・レースで、最も魅力的なものの1つといえば、イタリアのミッレミリアだろう。とはいえ、多額を投じてレストアされた貴重なモデルで、大富豪が参戦するイベントだとお考えの読者も多いのではないかと思う。

確かに、そんな側面がある。しかし適切なクルマを選び、充分な準備を踏めば、現実的な予算で完走も不可能ではない。実際、とある2人は満面の笑みでグレートブリテン島へ帰ってきたのだから。

アルファ・ロメオ1900 スーパー(1950〜1959年/欧州仕様)
アルファ・ロメオ1900 スーパー(1950〜1959年/欧州仕様)

紳士的な人柄で、農業を営むシェリダン・ボウイ氏には、恐竜を専門に研究するマーク・デヴァニー氏という友人がいた。クルマへさほど詳しくなかったシェリダンにとって、非常に好都合な人物といえた。

マークは現代的なフェラーリの他に、ランチア・アッピア・コンバーチブルとオリジナルのフィアット500 アバルトを所有する、生粋のイタリア車マニア。12歳の頃にクルマの運転を練習したマイクロカー、フィアット・ガミーネも、大切に維持している。

ミッレミリアへの参戦計画は、シェリダンが数年前にフィレンツェを旅した時に偶然生まれた。そこで彼は、スポンサーの1社である高級腕時計ブランド、ショパール社に務める人物と出会ったのだとか。

弾んだ会話の中で、ゲストとしての招待ができると提案されたらしい。適切なクラシックカーを準備できれば、2023年のイベントへ参戦できる可能性が生まれた。

ミッレミリアへ適したアルファ・ロメオ1900

グレートブリテン島の南東部、ケント州タンブリッジ・ウェルズという小さな町に住むシェリダンは、コドライバーをマークに依頼。もちろん、快く応じてもらえた。ところが、肝心のクルマは決まっていなかった。

「ミッレミリアは、該当モデルのリストを作っています。その殆どは、極めて高額で取引されるような、エキゾチックで希少なクラシックカーばかりです」

アルファ・ロメオ1900 スーパー(1950〜1959年/欧州仕様)
アルファ・ロメオ1900 スーパー(1950〜1959年/欧州仕様)

「ACエースやジャガーXK120といった、そこまでレアではないクルマも含まれていますが、適合する仕様は高額です。ヒーレーも考えましたが、申し込み多数で諦めました」

そんな折、奇遇にも売りに出されているアルファ・ロメオ1900 ベルリーナを発見。新車当時も多くの人をスタイリングで魅了し、クラシックカーとして価値も高い。オリジナルのミッレミリア・レースではクラス優勝も果たしており、適した1台といえた。

「しかもその1900は、1989年以来18回も復活したミッレミリアへ出場した経歴がありました。経験の浅い私たちにピッタリな、状態の良い車両でもあったんです」

マークの提案にシェリダンは同意。2022年の夏に、英国のオールド・レーシングカー・カンパニー社から左ハンドルの1955年式1900 スーパーを購入した。

「参戦できることには、半信半疑でした。正式にエントリーされていると知った時から、慌てて現実的に動き出したんです」。とマークが笑う。

2人がシェイクダウン・イベントに設定したのが、グッドウッド・リバイバル。そこでは、古いアルファ・ロメオらしく発電用のダイナモが不調に。ほかにも、整備へ多くの時間を割くことになった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アルファ・ロメオ1900でミッレミリアを走ってみた2人の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

アルファ・ロメオの人気画像