モニターへ「全集約」どう思う? ボルボEX30 ツインモーターへ試乗 428psを活かせないシャシー

公開 : 2024.03.13 19:05

428psを効果的に活用できないシャシー

5秒以上前方から目線が逸れると、ドライバーの監視システムが警告を鳴らす。煩わしい場合は、監視システムをオフにはできる。だが、それは安全といえるだろうか。

ドライバー監視システムという技術は、現在のモデルへ求められる重要なものだと思う。この点で、ボルボを批判するつもりはない。表示情報の多いヘッドアップ・ディスプレイが装備されていれば、ずっと運転のしやすさは高まるはず。

ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)
ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)

今回試乗したEX30は、ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラというグレード。最高出力は428psもあり、場面によっては不必要に感じるほどパワフルだった。これほどの動力性能を備えているなら、見やすいスピードメーターは歓迎されるだろう。

全長は、新しいフォルクスワーゲンティグアンより約300mmも短い。それでいて車重は1885kgあり、遥かに重い。パワフルなツインモーターを搭載するが、ストロークの長いサスペンションも与えられている。

0-100km/h加速は、少々誇張気味のようだが、3.6秒が主張されている。しかし実際のところ、秀でた動力性能を効果的に活用できるほど、姿勢制御や操縦性に締まりはないといえるだろう。

このクラスのクロスオーバーとして、加速力は例外的に鋭い。だがシャシーはそれに追いつけず、速く運転するほど、深みにハマっていくような印象だった。

シングルモーターの方がバランスが良い?

滑らかなアスファルトでは好印象で、幹線道路やロータリー交差点での落ち着きも良好。ところが郊外の道を飛ばし始めると、姿勢制御が落ち着かなくなっていく。かつてのボルボのように、ドライバーを優しく包み込む安心感や信頼感は得にくい。

実際にステアリングホイールを握っていないので、推測ではあるが、シングルモーター版の方が、動力性能とシャシーとのバランスは優れるのではないかと思う。ボルボも、ツインモーター版より売れると予想しているから、準備ができ次第試乗してみたい。

ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)
ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)

今回のツインモーター・パフォーマンス・ウルトラは、方向性が定まりきっていないといえるだろう。持続可能性を優先しているのか、過激な走りを求めているのか。

EX30に載る駆動用モーターは、ボルボXC60の後継モデルに当たる、次期バッテリーEVにも搭載予定だそうだ。小さなクロスオーバーには、少し手に余るユニットなのかもしれない。

ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)のスペック

英国価格:4万4495ポンド(約841万円)
全長:4233mm
全幅:1836mm
全高:1549mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:3.6秒
航続距離:449km
電費:5.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1885kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:64.0kWh(実容量)
急速充電能力:−kW
最高出力:428ps
最大トルク:55.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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