ガソリン車とEVのイイトコ取り Mk8.5 フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッド(2) 無理なく変化の波へ

公開 : 2025.06.24 19:10

EVを除いて電気で最長走れるVW、ゴルフ eハイブリッド バッテリー倍増の19.7kWh 概ね上質な内装 快適性重視のシャシー 熟成感が滲む走り EVのライバルにもなり得る UK編集部が試乗

7代目ゴルフ GTEと同等のパワー 主役はモーター

大幅なアップデートを受けた、8代目フォルクスワーゲン・ゴルフのプラグイン・ハイブリッド、eハイブリッド。駆動用バッテリーの充電量に関わらず、頼もしい動力性能を発揮してくれる。それでいて、運転のしやすさや洗練性、エネルギー効率も磨かれた。

フル充電状態なら、フロントタイヤがスピンしかけるほど活発。充電が切れても、発進加速はアップデート前より鋭い。システム総合で203psという最高出力は、7代目ゴルフ GTEと同等なのだから、納得の速さといえるだろう。

フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッド・スタイル(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッド・スタイル(英国仕様)

発進時は、専ら駆動用モーターが担当。ドライブモードをスポーツにしても、1.5Lターボエンジンは必要な場面でしか回転しない。静止状態からフル加速を試みると、エンジンの出力をフロントタイヤへ伝えるのに、僅かに苦しそうな場面はある。

一方、優しくアクセルペダルを傾けていれば、80km/hまでは駆動用モーターで対応できる。それ以上の負荷になると、エンジンがそっと静かに始動。タコメーターの針の動きで、お目覚めを確認できる。その存在感が目立つのは、高回転へ上昇した瞬間程度だ。

快適性重視 ルートを選ばず熟成感が滲む走り

流れの速い郊外の一般道や高速道路では、やはりエンジンの出番は多くなる。それでも、軽負荷時にはストップし、電気だけで走れる時間は短くない。

複雑で重いパワートレインが載るため、よりシンプルなハッチバックと比較して、自然さや軽快さは薄いかもしれない。それでも、GTEより快適性重視のゴルフとして、ルートを選ばず好印象な走りを叶えている。

フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッド・スタイル(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッド・スタイル(英国仕様)

乗り心地は優しく、グリップ力は頼もしく、姿勢制御は安定。ステアリングの反応は正確で予想通り。適度に機敏で、走りには熟成感が滲む。伝統のゴルフならでは、といえる充足感だろう。荒れた路面では、僅かに落ち着きを欠く場面はあるけれど。

DCCアダプティブダンパーはオプションだが、路面への対応力が広がる。積極的にカーブへ突っ込んでも、姿勢制御が追いつかなくなることは殆どない。ダンパーを引き締めるとボディロールが抑えられ、通常以上の操縦性のバランスを楽しめる。

800km以上走っても減ったガソリンは半分

運転支援システムは、英国仕様では中級トリムグレード以上で標準。制限速度警告は、システムをオンにする度に有効になる。だが車線維持支援と同じく、タッチモニター上部に表示されるメニューで、望まなければ簡単に無効にできる。

ドライバー監視機能は、過敏ではなく好ましい。「トラベルアシスト」アダプティブ・クルーズコントロールの動作は、自然で優秀。ステアリングホイールの握り方へ、寛容なのもポイント。1週間お借りしたが、衝突被害軽減ブレーキの誤作動もなかった。

フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッド・スタイル(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッド・スタイル(英国仕様)

今回は800km以上走行し、サーキットも周回させてみたが、ガソリンタンクは半分しか減らなかったことが驚き。駆動用バッテリーだけで走れた距離は平均105kmで、電費は5.4km/kWh。これは、同クラスのバッテリーEVに並ぶ効率の良さといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    役職:ソーシャルメディア・エグゼクティブ
    AUTOCARのSNS担当として、X、YouTubeショート、インスタグラムなどの運営を任されている。以前は新聞紙や雑誌に寄稿し、クルマへの熱い思いを書き綴っていた。現在も新車レビューの執筆を行っている。得意分野はEVや中古車のほか、『E』で始まるBMWなど。これまで運転した中で最高のクルマは、フォルクスワーゲンUp! GTI。 『鼻ぺちゃ』で間抜けなクルマだったが、家族の愛犬もそうだった。愛さずにはいられないだろう。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

Mk8.5 フォルクスワーゲン・ゴルフ eハイブリッドの前後関係

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