ベントレー 次世代車コンセプト『EX 15』発表 最上級リムジン、ミュルザンヌ後継か

公開 : 2025.07.10 06:45

ベントレーは次世代EVのデザインの方向性を示すコンセプトカー『EX 15』を発表しました。セダンとSUVを融合したようなフォルムを持ち、3人乗りのキャビンは伝統と革新を融合したレイアウトとなっています。

伝統を守りながら大きく進化

ベントレーは、新型のコンセプトカー『EXP 15』を発表した。今後の市販モデルのフォルムとデザインを予告するもので、フラッグシップモデルであるミュルザンヌの後継車となる可能性がある。

全長5.4mのEVで、セダン、SUV、グランドツアラーの境界を跨ぐスタイルは、ベントレーの歴史的モデルからインスピレーションを得ており、現行モデルのコンチネンタルGT、フライングスパーベンテイガとは一線を画す未来的な外観となっている。

ベントレー『EX 15』コンセプト
ベントレー『EX 15』コンセプト

これは、デザイン責任者ロビン・ペイジ氏の意思表明でもある。同氏は17年間にわたってインテリアデザイン部門で活動した後、ボルボへ移籍し、2023年に古巣のベントレーに戻ってきた。

ペイジ氏はAUTOCARの取材に対して、EXP 15の開発では、ベントレーを特徴づける要素を忠実に守りつつ、それを大幅に進化させることが目標だったと語った。

「ベントレーの直線的なデザインラインを踏襲していますが、これは新たなスタートであり、新しいデザイン言語なのです。ポイントは、ちょっとした衝撃を与えること。つまり、次の章への扉を開くことです」とペイジ氏。

「また、このプロジェクトは、よりモノリシックで、より力強く、よりクリーンで、過度に複雑ではない、新しいモダンなデザイン言語を試すチャンスにもなりました」

今後の特徴となる新しいデザイン

EX 15の主な目的は、次世代のベントレー車を定義する5つのデザインテーマを紹介することだ。5つのテーマはすべて、最初期のGTカーの1つ、1928年の『スピードシックス』(ボディはコーチビルダーのガーニー・ナッティングによるもの)から着想を得ている。

スピードシックスは1930年にカンヌからロンドンまでのブルートレインレースで勝利を収めたことで知られている。EX 15では、このスピードシックスを現代風に再解釈した、さまざまなスタイリング要素を取り入れた。

ベントレー『EX 15』コンセプト
ベントレー『EX 15』コンセプト    ベントレー

まず、フロントエンドの「アップライト・エレガンス(美しくまっすぐに立つ)」は、現行モデルよりも緩やかに弧を描くラインで構成され、堂々とした威厳のあるたたずまいを演出している。

ペイジ氏は、「デザインを後方に傾けるようにしましたが、ヘリテージカーに見られる力強い直立の要素が、フロントで表現したかった誇り高い自信を与えています。わたし達はそれを馬に例えています。サラブレッドが立ち止まるときの姿を想像すると、その胸はまっすぐに立っているでしょう」と語っている。

このように直立した塊感のあるフロントエンドは、他社が効率性を追求して採用している、低くて彫刻的なデザインとは対照的だ。しかし、ペイジ氏は、ベントレーはEV航続距離で新記録の樹立を目指すようなことはしないと言う。

「航続距離に関しては、最適なポイントがあることがわかってきました。当社の顧客からは、基本的に480~560kmが最適だと伺っています。それ以上の距離なら、プライベートジェットを使うそうです」

「エンドレス・ボンネットライン」も重要な特徴であり、独特の形をしたスリムなランニングデイライトの開口部が、従来型と新型の顕著な共通点の1つであるという。

一方、リアエンドは、同社の『B』エンブレムから着想を得た新しいライトシグネチャーを採用し、「プレスティージャス・シールド」と形容されている。これは過去のベントレー車に装備されていた、リアのラゲッジスペースがモデルになっている。

4つ目のデザインテーマは、「レスティング・ビースト」のプロポーションだ。長いボンネット(1930年代風のピアノヒンジ式リッドを備えた大型のフランクを装備)、キャビンを後部に寄せたシルエット、強調されたリアアーチが特徴だ。

「これは、虎が横たわったときの力強い肩に着想を得ています」とペイジ氏は説明する。「後脚に力強さがあるのです」

EXP 15は、現在のベントレーのデザイン概念から劇的な転換を遂げたモデルだが、同社の最も重要な特徴をいくつか継承している。

ペイジ氏は、グリルをモチーフにしたフロントの「アイコニック・グリル」をその代表例として挙げる。

「グリルを当社の主なコミュニケーション手段として維持することに決めました。これまで、グリルは内部に空気を送り込むためのものでした。しかし、もはやその必要はなくなったため、アートとして捉えることにしました」

フロントエンドの大部分をダイヤモンドパターンが占め、その背後には「クリスタル」をモチーフにしたLEDライトディスプレイが配置され、見る角度によって変化するダイナミックな効果を生み出している。また、ヘッドライトは従来の円形デザインからスリムな縦型レイアウトに変更されている。

ペイジ氏は、円形のヘッドライトは、照明技術が他の形状を許さなかった時代の名残だと述べた。「円形のライトを採用すると、レトロな印象を与えることがわかっています。わたし達は、人々が円形のライトにどれほど情熱を持っているかを試したいのです」

ベントレーの過去から影響を受けながらも、あからさまにレトロなデザインは避けるように努めたという。「模倣を始めると、すぐにレトロの罠に陥ってしまう」と同氏は言う。

「顧客やディーラーからは、もっとモダンで進歩的であるべきだというフィードバックをいただいています。古いクルマも大好きですが、結局のところ、街で一番クールな存在になりたいのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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