ロータス創業者も1勝掴んだMk1 市販サルーン最速といえたMk2 クームズ・チューン・ジャガー(1)

公開 : 2025.09.13 17:45

最古参ディーラー、クームズ&サン社のチューニング・ジャガー チャップマンも1勝を掴んだMk1 市販サルーン最速といえたMk2 フェラーリ500に勝ったEタイプ UK編集部が3台をご紹介

ジャガーの最古参ディーラー「クームズ&サン」

グレートブリテン島南部、ギルフォードに存在したクームズ&サン社は、ジャガーの最古参ディーラーだった。代理店契約が結ばれたのは1936年で、1947年にレーシングドライバーのジョン・クームズ氏が事業を継承。モータースポーツで名声を築いた。

英国の年配ジャガー・マニアは、今でもクームズの名前を聞くと目を輝かせる。それは、彼の手掛けたサルーンが残した栄光のせいだろう。

ジャガーMk1(1955〜1969年/クームズ仕様)
ジャガーMk1(1955〜1969年/クームズ仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ジャガーは1958年に、クームズとトミー・ソッピース氏、ブリッグス・カニンガム氏という3名のドライバーへ、3.4L「XK」エンジンのサルーン、Mk1を3台づつ提供。1959年の英国サルーンカー選手権で、競わせることにした。

クームズはそれをパールセント・グレーで塗装し、1台をBUY 1のナンバーで登録した。これは今も健在で、グッドウッド・リバイバルなどのカーイベントで勇姿を披露している。この記事の中でも。

内装と保護塗装を剥がし軽量化 初陣で2位

ジャガーから届けられたMk1には、大容量の燃料タンクとバケットシートが備わり、ドアとボンネットはアルミ製に置換されていた。直列6気筒エンジンには3基のSUキャブレターが載り、オーバードライブなしの4速MTに強化クラッチが組まれていた。

クームズは、内装のウッドパネルなどを省略。アンダーシールを剥がし、運転席以外のウインドウ・ワインダーを取り除き、軽量化を図った。リアアクスルは、片側2枚のリーフスプリングで強化。トーインが強められた。

ジャガーMk1(1955〜1969年/クームズ仕様)
ジャガーMk1(1955〜1969年/クームズ仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

デビュー戦は、1959年のグッドウッド・イースター・ミーティング。ロイ・サルバドーリ氏をドライバーに迎え、2位という好成績を残している。その後、同シーズンに何度かの優勝を果たし、ジャガーMk2の登場と交代するように売却された。

1960年と1961年は、ピーター・サージェント氏の運転でクラブイベントに参戦。1962年にリスカ・ガレージ社を営むウィリアムズ氏が購入し、進化を重ね10年間レースへ挑んだ後、26年間の眠りについた。だが、1990年代後半に復活を果たしている。

チャップマンもクームズのMk1で1勝

クームズのBUY 1と残りの2台、BUY 12、TRY 1のナンバーで登録されたMk1は、英国各地のサーキットで観衆を魅了。ロータス創業者のコーリン・チャップマン氏も、1960年にその1台でシルバーストーンのイベントを戦い、優勝している。

この成功を後ろ盾に、クームズは1959年に発売されたMk2へチューニングを加え、一般に販売した。正確な情報は残っていないが、標準のMk2が数100台売れた一方、大幅に手が加えられた「クームズ仕様」にも、合計30台前後の注文があったらしい。

ジャガーMk1(1955〜1969年/クームズ仕様)
ジャガーMk1(1955〜1969年/クームズ仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

28台や38台など、説は様々。少なくとも、SUキャブレターとバケットシート、スリット状インテークが切られたボンネットが与えられたMk2は、2台だけだったようだ。

クームズ仕様のMk2は、速いだけでなく乗りやすかった。直6エンジンはバランス取りされ、通常のXKユニットより滑らかに回転。燃費は5.0km/L以上で、目立って悪化してもいなかった。必要なら、大容量燃料タンクの搭載も可能だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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