「何よりも大切なのは運転する喜び」 ヒョンデの走りを変える開発責任者マンフレッド・ハラー氏に会う

公開 : 2025.10.21 17:45

自らステアリングを握り、走りを磨く

「わたし自身もクルマに乗り込んで、運転することがたくさんあります」

ポルシェの元エンジニアとしての血が騒ぐのか、彼は機会を見つけてテスト車両に乗り込み、エンジニアチーム全体にも同じようにさせるのだ。

キア・スポーテージ
キア・スポーテージ

「これはわたしのDNAに刻まれた、エンジニアとしてのレガシーです。クルマの反応やレスポンス、NVH(騒音・振動・粗さ)特性を深く理解しているからこそ、チーム、特に若手エンジニアと協力できると思っています。彼らも非常に評価しています」

ハラー氏を招き入れたHMGは、クルマの走行性能の向上に力を入れており、その姿勢はCEOレベルにまで浸透している。現時点で彼がHMGの市販車に影響を与えるにはまだ日が浅いが、キアの『EV6 GT』は同ブランドで実現したい方向性を示していると述べ、「運転の楽しさが何よりも重要」と断言した。

筆者の考えでは、キアとヒョンデはデザインと品質では大きな進歩を遂げたが、ドライビング・ダイナミクスはそれに追いついておらず、いまひとつ魅力に欠けている。つまり、やや画一的で安全策に走っているという意見だ。

ハラー氏は外交的で、筆者と同じ言葉は使わなかったが、両ブランドの走りを変革する自身のビジョンについて喜んで語ってくれた。

「キアは若々しいブランドなので、レスポンスに優れたスポーティなキャラクターのクルマを作ることができます。デザイン面でのキャラクターを確立し、それにダイナミックな感覚とエモーションを融合させるため、わたしは(キア社長兼CEOの)ソン・ホソンや(デザイン責任者の)カリム・ハビブと協力して取り組んでいます。エモーションとドライビング・プレジャー。それがキアにとって最も重要な要素です」

ヒョンデについては、「確立されたブランドであり、オールラウンダー」だと述べつつ、「さらに踏み込んで、運転の楽しさを増やしつつ、オールラウンドなダイナミック特性を過度に損なわないようにすることができます」と付け加えた。

彼の説明は、キアにフォードのような日常的なハンドリングの軽快さを与えつつ、ヒョンデにはフォルクスワーゲンのような安定感を持たせようとしているように聞こえる。彼は筆者の言葉に頷くことはしなかったものの、異論は唱えなかった。

特にキアにおいて「顧客に笑顔を届ける」ための第一優先は、「車内の居心地」だという。その次に、「ステアリングホイールの握り心地、グリップレベルを感じ取れる太さ」に焦点を当てる。

ここでステアリングのスペシャリストの出番だ。「次にステアリングのレスポンスです。明確かつ正確であること。あなたたち英国人(記者)が正確なセンターステアリングフィールにどれほどこだわるか、よく知っているつもりです。それからレスポンスの立ち上がり、クルマのレスポンス、リニアな動き。わたしにとってはこれが、快適性を過度に犠牲にすることなく与えられる、エモーションなのです」

「チューニングにはある程度の自由が認められています。特定の要素(ステアリングだけでなくサスペンション部品も含む)に多少コストをかかったとしても、クルマのキャラクターを研ぎ澄ます価値はあります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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