「何よりも大切なのは運転する喜び」 ヒョンデの走りを変える開発責任者マンフレッド・ハラー氏に会う

公開 : 2025.10.21 17:45

運転支援システムの調和

最後に最も厄介な話題である、運転支援システムについて触れる。HMGの市販車は警告音の多さで悪名高いが、ハラー氏は速度制限認識や車線維持支援などのADAS機能について「ドライバーを煩わせたり圧倒したりせず、サポートに徹すべき」と述べている。もちろん、法規制上の要件をクリアした上での話だ。

ハラー氏は解決策として、開発アプローチの転換を提案する。

キアEV6(英国仕様)
キアEV6(英国仕様)

「電子機器担当者だけに任せてはいけません。車両エンジニアリング担当も巻き込み、共同でチューニングとキャリブレーションを行う必要があります。ただ、これですべての問題が解決するわけではありません。速度制限警告など、煩わしく思われるものもありますが、これは規制の一部です。わたし達は車両ダイナミクスの専門知識と統合技術に立ち返り、これらの機能がドライバーを煩わせず支援する方法を模索し続けています」

この問題の解決は「まだ始まったばかり」だとハラー氏は語るが、すでに山積みの課題に新たな仕事が増えた。インタビューの中で、彼は現代のクルマが抱える問題点について熱を込めて語ったが、それは全体像の一部に過ぎない。彼は自らの主張を裏付ける実績も持っている。あとは彼に任せるのが最善だろう。

話題のトピックに関する見解

EVへの全面移行について

ハラー氏は、EVと並行して内燃機関車やハイブリッド車への投資を継続する自動車メーカーは「非常に賢明な決断」をしたと主張する。なぜなら、EV市場はまだ十分に成長しておらず、電動化技術に全面移行するには時期尚早だからだ。

HMGはグローバル企業として、EVがまだ普及していない地域では既存技術の開発と販売を継続している。

マンフレッド・ハラー氏
マンフレッド・ハラー氏

HMGの開発における大きなテーマの1つは、パワートレインの効率性(燃費、電費)向上である。エンジン車に関しては各地域の法規制対応という側面が強いが、EVにおいては高効率化によってバッテリーの小型化が可能となり、結果としてコスト削減につながる。

全固体電池

全固体電池が普及するか否かについては、研究開発責任者たちの間でも意見が分かれている。全固体電池は長年、バッテリーの小型化とコスト削減を実現する手段として期待されてきたが、ハラー氏は実用化されるまで少なくともあと5年はかかると見ている。

既存技術は「多くの可能性を十分に秘めている」という。HMGは韓国LGをはじめとするパートナー企業と緊密に連携し、NMCバッテリーのニッケル含有量を削減することで、特に中国で台頭する安価なLFPバッテリーと同等のコスト実現を目指している。

レンジエクステンダーEV

中国におけるレンジエクステンダーEVの台頭を受け、HMGなど一部のメーカーが開発を急いでいる。ハラー氏は「さらなる複雑化」を招くと指摘しつつも、「当社もラインナップに組み入れる必要があるでしょう」とした。

ニュルブルクリンク

ドイツの伝説的なサーキット、ニュルブルクリンクにはHMGの開発センターが置かれており、ハラー氏も重要視している。「ここでテストすれば、車両は長持ちします。わたし達は全車種で実施しており、高性能車ラインナップにさらなる勢いをもたらしています」

人工知能

ハラー氏は自動車開発におけるAIの台頭について、開発を加速し、作業の重複を防ぐ点で「驚異的」と評する。HMGは現在、CADシステムへのAI統合を進めている。「例えば、新しい部品の設計を始めると、AIがデータベース上に類似部品が存在することを提案してくれます」

「あるいは、ここやあそこの半径を調整すれば、生産コストを削減できると教えてくれるのです。スマートになり、助言や指導、提案を受けられます。これにより、エンジニアのCADシステムでの作業方法や、モデリングやシミュレーションの構築方法が変わるでしょう。わたし達は自動車産業における新たな時代の始まりに立ち会っているのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事