VWは「お尻」で中国に勝つ ソフトウェアには真似できない開発ツールとは? 技術責任者が語る情熱

公開 : 2025.11.06 18:05

次世代EVは誰のためのクルマか?

グリューニッツ氏はフォルクスワーゲン・グループで約30年間勤務しており、チェコブランドのスコダやフォルクスワーゲン・コマーシャル・ビークルズ(商用車部門)で長年従事。自動運転技術に携わった後、技術部門全体の責任者に就任した。フォルクスワーゲンの乗用車ブランドへの異動は、トーマス・シェーファーCEOが主導した経営刷新の一環である。

グリューニッツ氏はCEOやチーフデザイナーほどの知名度はないが、「フォルクスワーゲンらしい走り」を実現するという目標においては等しく重要な人物だ。

フォルクスワーゲンブランドの技術開発責任者カイ・グリューニッツ氏
フォルクスワーゲンブランドの技術開発責任者カイ・グリューニッツ氏

新型IDポロは、グループの中核となる新プラットフォーム『MEBエントリー』を採用している。これは約2万2000ポンド(約440万円)の価格帯を実現するためにEV専用プラットフォームを簡素化したものだ。グリューニッツ氏はその3年に及ぶ開発プロセスを振り返り、次のように語った。

「2022年のクリスマス直前に着手しました。フォルクスワーゲンらしい外観の最初のスケッチとアイデアが生まれ、それ以来、そのコンセプトを進化させてきました。3年間にわたり、最初のスケッチから完成車の発表まで一貫して携わる機会を得たのは今回が初めてです。技術者として何かを始めても、途中で別のプロジェクトに移ることが多いのです。このクルマに関しては、わたしは設計から生産まで関わっています」

ブランドの迷走を自覚している

長期にわたる関与により、グリューニッツ氏はこのプロジェクトに「自分の足跡をしっかり残す」機会を得たが、彼は次のように付け加えている。

「重要なのは、このクルマがわたし個人のために作られたクルマではないということです。過去には、(元最高責任者である)フェルディナンド・ピエヒ氏や(マルティン・)ヴィンターコルン氏のために作られたクルマもあります。しかし、このクルマはお客様のために作られたものです。デザインや技術の面でわたしにとって完璧である必要はありません」

「このクルマを開発する際、お客様がこの種のクルマに何を求めているかを徹底的に調べ、さまざまな研究調査を行いました。これは役員のためのクルマではなく、お客様のためのクルマです」

文字通り「国民車」であるフォルクスワーゲンが、顧客が望むものよりも役員の要望に重点を置いてきたという告白は、W16エンジンなど、かつてピエヒ氏が手掛けた目もくらむほど高額なプロジェクトを考えると、まったくの驚きではないにしても、印象的なものである。しかし、こうした過去の誤りを認め、ブランドの迷走を自覚していることから、グリューニッツ氏はこれから何をすべきか正しく理解していると言えそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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