VWは「お尻」で中国に勝つ ソフトウェアには真似できない開発ツールとは? 技術責任者が語る情熱

公開 : 2025.11.06 18:05

初の電動GTIに求めるもの

興味深いことに、IDポロの原型となったのは、純粋にフォルクスワーゲンらしいデザイン言語の復活に焦点を当てたコンセプトカーだ。デザイン責任者のアンドレアス・ミント氏は、内燃機関モデルへのオマージュとしてデザインの改変が必要だったことを認めている。

走行性能に関してグリューニッツ氏はこう語る。「もともとポロの開発に焦点を当てていたわけではありません。真のフォルクスワーゲンを取り戻すことに集中したのです。デザイン、素材、価格帯、機能性などにこだわり、この理念が開発プロセスの指針となりました」

『GTI』の名はスポーティな前輪駆動車にのみ与えられる
『GTI』の名はスポーティな前輪駆動車にのみ与えられる

IDポロは、高性能の『GTI』バージョンが設定される初のEVモデルとなる。これまでのIDシリーズは後輪駆動を基本とし、最上位モデルは四輪駆動の『GTX』だったが、IDポロとGTIはいずれも前輪駆動となる。グリューニッツ氏は新型GTIの開発に興奮を隠しきれないといった様子だが、これは過去数年間、自身の生まれた年のゴルフGTIを入手しようとかなりの時間を費やしてきたためだ。

後輪駆動とする必要はない

「GTIの開発は楽しいですよ。作りたいものが明確なんです。GTIは昔からずっと前輪駆動でしたから、今回前輪駆動モデルとなることに満足しています。後輪駆動とする必要はないでしょう。確かに前輪駆動ではホイールスピンを防ぐため出力が制限されますが、それはGTIの常です。四輪駆動のゴルフRならパワーも加速も上ですが、感覚が違います。GTIに乗るということはアディダスのスニーカーを履くようなものです」

特筆すべきは、ポロGTIが大幅なパワーアップを見送った点だ。最高出力226psと比較的控えめで、多くの高性能EVが追うトレンドを避けている。「これはスポーティなクルマです。スポーティなクルマとは、加速性能だけではありません。GTIがもたらす独特のフィーリングも重要です。GTIは機敏で、ゴーカートのようなフィーリングと低重心を実現しなければなりません」

「駆動系に関して言えば、標準のIDポロとGTIバージョンの間で出力に大きな差はありません。ただ、フロントアクスルにトルクスプリッターを装備し、駆動系とシャシーには専用アプリケーションを採用しています。さらにステアリングホイールのGTIボタンを押してブーストアップできるGTIモードも備えています。きっと気に入っていただけるでしょう」

ソフトウェアがもたらす変化

フォルクスワーゲンはEVへの移行に伴い、「ソフトウェア定義型車両(SDV)」という大きな壁に直面した。グループ傘下のソフトウェア子会社カリアドが開発したシステムを搭載する初期のIDシリーズでは、これが重大な問題となった。

「ソフトウェア面ではかなりの課題があったと言えるでしょう」とグリューニッツ氏は控えめに笑いながら語る。「業界ベンチマークと言える安定性を確保するまでに2~3年を要しました。当社はプロセスを徹底的に見直し、改善策を模索しました」

新型IDクロス・コンセプト
新型IDクロス・コンセプト

その一環として、MEBエントリー開発におけるスコダクプラとの協業など、グループ各ブランド間の連携強化が図られている。ソフトウェアの全体像だけでなく、運転中に表示される警告音の数といった些細な点にも目を向けている。「こうした警告は多方面でお客様を煩わせます。わたし達もそれを望んでいません」とグリューニッツ氏は認めた。

鍵はリビアンとの合弁事業

今後のソフトウェア開発の鍵となるのは、リビアンとの合弁事業だ。新しいソフトウェアアーキテクチャーを開発し、2027年以降のほとんどのモデルに展開する予定である。

「リビアンは1つの地域で1つのプロジェクトを進める小規模な企業です。それに対し、当社は世界中から集まった10のブランドを抱えるグループです。両者の強みを活かすのは非常に興味深いことであり、同時に難しくもあります。彼らのソフトウェアは完璧ではありませんが、非常に良い出発点となります。特に優れているのは、無線アップデート(OTA)の機能です」

グリューニッツ氏は、最初のテスト車両でさえ無線アップデートが可能であり、これが「非常に大きな」違いを生むと指摘する。「仕事の進め方そのものが大きく変わります」

結局のところ、これは先進的なソフトウェアプラットフォームを基盤とするEV時代において、新型車開発の手法がどのように変容しているかを示す例と言えるだろう。しかし、自動車は依然として動く機械の驚異であり、それを深く理解することこそが開発の鍵であり続けるだろう。

だからこそ、グリューニッツ氏のような人物がフォルクスワーゲンを率い、情熱とポポメーターを携えていることは心強い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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