EV界にはホンダN-ONE e:とスーパーワンが必要だ #JMS2025【日本版編集長コラム#55】

公開 : 2025.11.09 13:25

提供したい価値は『素のうどん』

一方のエンジニアは提供したい価値を『素のうどん』と例えている。

Gグレードのディスプレイなしはやはり挑戦的と考えているが、ナビゲーションをそれほど使わない潜在層もあると分析。そのためデザイン的にもすっきりし、価格も抑えられるため設定に到ったそう。

実際に商店街などを走って、走りやすさ、扱いやすさを追求した。
実際に商店街などを走って、走りやすさ、扱いやすさを追求した。    平井大介

水平基調のインパネはシンプルさがコンセプトで、ボタンの数を少なめにした。また、視界がよく、クルマの感覚や幅が掴みやすいことも意識した。

シングルペダルに関しては、社内の女性にも乗ってもらい研究したという。そこで得た結論は、『一度でも難しさや違和感を感じさせると一生使ってもらえない』ということだ。今回は『eデイリーパートナー』というコンセプトがあり、マニアックさよりは、自然さが重要となった。

そこで女性があまり使わないパドルシフトは付けず、アクセルに対する挙動の出し方や止まり方は、商店街なども走って研究したという。例えるなら、家からスーパーまでブレーキを使わずに往復できる、街中でのちょうどよさを追求した。

また、長崎のような坂が多い地域で4人乗ってもすいすい走れるとし、これは前述の駆動トルクが関係している。床下に収めたバッテリーの恩恵もあり重心は低く安定感があり、軽自動車のEVとして静かでよく走るものができたという自信を、言葉の端々から感じることができた。

軽自動車EV市場が一気に活性化

軽自動車EVは、『日産サクラ/三菱eKクロスEV』のきょうだい車が先鞭をつけ、これにホンダが『N-VAN e:』と『N-ONE e:』で続き、恐らく来年にはスズキが今回JMSで出展した『ヴィジョンeスカイ』の市販版が登場。BYDも『ラッコ』で軽自動車EV市場参戦と、一気に活性化してきた。

筆者が住む静岡県東部では、特に道が狭くガソリンスタンドが遠い山間部になると、日産サクラを多く見かける印象だ。今後選択肢が増え、インフラ環境がもっと整えば、これらは地方の星になる可能性がある。少しサイズが大きくてもよければ、ヒョンデ・インスターという選択肢もでてきた。

スーパーワン・プロトタイプの市販版は2026年に登場予定だ。
スーパーワン・プロトタイプの市販版は2026年に登場予定だ。    山田真人

そういった中でN-ONE e:のようなモデルが増えることは歓迎だし、それをベースとしたスーパーワンのような遊び心こそ、今、EV界に必要だと感じるのであった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 撮影

    山田真人

    Makoto Yamada

    1973年生まれ。アウトドア雑誌編集部からフリーランスカメラマンに転身。小学5年生の時に鉄道写真を撮りに初めての一人旅に出たのがきっかけで、今だにさすらいの旅をするように。無人島から海外リゾート、子どもからメガヨットと幅広い撮影ジャンルを持つ。好きな被写体は動くものと夕陽。

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