民生用で最も成功した水陸両用車『アンフィカー770』(後編) 総生産3878台のうちの1台 レストア済みの個体で人生の余白を楽しむ?

公開 : 2026.02.28 12:25

『東京オートサロン2026』の会場で、誰もが足を止める水色のインポートカーがありました。『アンフィカー770』と呼ばれる水陸両用車です。わずか3878台と言われるうちの1台を、高桑秀典が紹介します。その後編です。

競合するクルマが存在しなかった

わずか3878台しか生産されなかった『アンフィカー770』は、商業的には失敗したといえるが、実は競合するクルマが存在しなかったこともあり、自動車の歴史上、民生用で最も成功した水陸両用車となっている。

今回取材した現車は1963年式で、1998年にアメリカから個人輸入、実動状態で日本に上陸。このときのオーナーが国内新規登録で3年間乗り、その後、動かすことなくガレージ内で眠らせていた。往時に国内で船舶として水上運航したことはなかったという。

わずか3878台しか生産されなかった水陸両用車『アンフィカー770』。
わずか3878台しか生産されなかった水陸両用車『アンフィカー770』。    高桑秀典

オーナーが変わり、実走行3万9162kmという走行距離で大手インターネットオークションに出品されたが、最近になって自動車の共同所有サービスを展開している『ランデヴー』(RENDEZ-VOUS)の代表、浅岡亮太さんが個人車両として落札。

同社がユーザーに提案している人生の余白(楽しみ)を、これほどまでに拡げられるクルマは貴重で、浅岡さん自身が大切にしている価値観とも見事に合致したので購入したそうだ。

オークションに出品される前にレストアされており、塗装を完全剥離して鈑金し、ボディをオールペイント。シール、パッキン、ウェザーストリップなどを補正、交換し、浸水防止作業が徹底的に実施されたらしい。

そこまでやったので国土交通省の検査を受け、日本国内での小型船舶としての臨時運航許可を取得することに成功したのだという。

約200点の新品パーツを購入し交換

現在もアメリカでアンフィカー770の部品を取り扱う『ヒュー・ゴードン・インポート』の協力を得て、浸水防止関連を含む約200点の新品パーツを購入し、交換している点もトピック。

スピードメーター、燃料計、水温計、時計、各種スイッチ類、ウインドシールド、ドアガラス、ドアノブ類、キャブレター、セルモーター、ダイナモ、ホース類、サーモスタットなどが新しくなっており、幌も純正新品で交換済みだ。

燃料ポンプと点火系の全パーツを新品と交換。フューエルラインは銅パイプで引き直した。
燃料ポンプと点火系の全パーツを新品と交換。フューエルラインは銅パイプで引き直した。    高桑秀典

シートは純正の質感が悪かったので、オークション出品前にオリジナルのコンビカラーデザインで日本国内にて張り替えている。

今回は静的な取材だったが、水上で運航する際に必要となる装備についても聞いてきた。

例えば、ドアには特殊な水密シールがあり、それを所定の位置でロックするためのレバーがドアの下部に存在している。船底となる部分にはパッキンが付いたコックがあり、これが二重構造になっていて溜水を排水する場合の水抜きになるそう。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    高桑秀典

    Hidenori Takakuwa

    1971年生まれ。デジタルカメラの性能が著しく向上したことにより、自ら写真まで撮影するようになったが、本業はフリーランスのライター兼エディター。ミニチュアカーと旧車に深い愛情を注いでおり、1974年式アルファ・ロメオGT1600ジュニアを1998年から愛用中(ボディカラーは水色)。2児の父。往年の日産車も大好きなので、長男の名は「国光」。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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