【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#30 夢の竜宮城は生きていた!

公開 : 2026.03.20 12:05

これは3速ATのおかげか!

サンタナの元オーナーとしては、驚くべきことがまだたくさんあった。

当時私は、5気筒のSOHCとDOHC、2台のサンタナを乗り継いだが、乗り味はSOHCのほうがしなやかで、エンジンも低回転域のトルクがあり、懐が深い印象だった。

夢の竜宮城は生きていた!
夢の竜宮城は生きていた!    山本佳吾

しかし遠藤氏の1988年式『サンタナXi5アウトバーンDOHC』の足は、SOHCみたいにしなやかだ。実にちょうどよくこなれている。38年経ってるので当然かもですが!

エンジンも低回転域から十分トルクフルで、かつてよりずっと優しい印象だ。

そうか、これは3速ATのおかげか! ロックアップのないトルコンATゆえに、アクセルを踏み込むと自動的にトルコンがスリップし、回転が上がる。そのトルク増幅が、ホンワカした加速感につながっているんだね!

当時の私は3速ATに飽き足らず、2台目のサンタナ(DOHC)は5速MTを選んだが、どうもそれが間違っていたようだ。いやまぁ青春としては正しい選択でしたが、サンタナは3速ATに限る! だったのかもしれない。そんなマニアック過ぎる事実にいまさら気付くなんて感動!

オレ「遠藤さん、このクルマを手放す時はぜひ声をかけてください」

遠藤氏「いや、僕はこのクルマを手放しませんし、仮に手放したとしても、すでに3人待ちです。清水さんは4番目ですね(笑)」

オレ「げえっ!」

遠藤氏曰く、サンタナは売り物自体がほとんどなく、ましてやこんなに状態のいい5気筒のサンタナはたぶんないでしょう、と。

そうか、手遅れか……。

夢の竜宮城は生きていた。しかしそれは、すでに手の届かない領域だった。人生ってそんなものだ。幸運の女神には前髪しかないのだから。しみじみ。

(つづく/隔週金曜日掲載、次回は4月3日金曜日公開予定です)

記事に関わった人々

  • 執筆

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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