1929年のアルファが、なんと20億円で落札。レトロモビル内で開かれる公式オークションには、20世紀初頭から最新型まで貴重なモデルを含む146台が用意されました。

text: Kazuhide Ueno（上野和秀）　photo: ARTCURIAL MOTORCAR

レトロモビル併催　公式オークション

今や世界的なクラシックカー・イベントとして親しまれているのがレトロモビルである。もともとはフランスのローカル・イベントだったが、マニアックな内容から世界中のクルマ好きの注目を集める存在となり、地元フランスはもちろんヨーロッパ各国からの参加もあり、世界中のクラシックカー・ファンが集まるまでとなった。ちなみに今年は5日間の会期中に13万2000人の来場者を数える世界屈指のイベントに成長した。

このレトロモビルにリンクしてコレクターズカー・オークションがいくつか開かれているが、会場内で行われるオフィシャル・オークションが、パリを本拠に活動するオークションハウスのアールキュリアルにより行われた。

パリ国際展示場の広大なスペースを使ってのオークションだけに、20世紀初頭から現代までの様々なメーカーのコレクターズカーが146台用意された。レトロモビルというディープなイベントに来場するコアな愛好家に向けたオークションだけに、そのうち戦前車が約1/4を占め、地元のフランス車は9台のブガッティを筆頭にヴォワザンが7台、そこにシトロエンなどが加わり、出品車の3割を占めるというマニアックな内容だった。

最高落札額　1929年のアルファ・ロメオ

レトロモビルに関連して開かれたオークションの中で最もマニアックな内容で開かれたアールキュリアルだけに、トップ10も他とは違った顔ぶれが並んだ。最高落札額を記録したのは1929年アルファ・ロメオ8C 2900Bトゥーリング・ベルリネッタの20億9320万円という驚きの額だった。この20億9320万円という額は、戦前車の落札額世界新記録となる。当時5台のみが作られた中の2台目に当たる個体である。

2番値を付けたのは1960年代に活躍したジョヴァンニ・ヴォルピ伯爵率いるスクーデリア・セレニッシマが製作したレーシング・スパイダーの「セレニッシマ・スパイダー」。1966年のル・マン24時間に参加したマシンでもある。今回ヴォルピ伯爵のコレクションから放出されたもので、未レストア状態での出品だったが5億2735万円で落札された。ここでセレニッシマはスパイダーを含めて3台が出品されたが、この機会を逃すと次が無いことから3台すべてが落札された。以下10位までは、

2009年メルセデス・ベンツSLRスターリング・モス・エディション（3億2715万円）
1964年フェラーリ250GT/Lルッソ（1億2218万円）
1930年アルファ・ロメオ6C 1750グランスポルト・ロードスター・コルシカ（1億2218万円）
1971年ポルシェ916プロトタイプ “ブルータス”（1億1920万円）
1936年ブガッティ・タイプ57アトランティック・モディファイ（1億0662万円）
1967年フェラーリ330GTC（6705万円）
1937年ブガッティ・タイプ57カブリオレ（6258万円）
1954年メルセデス・ベンツ300Sカブリオレ（5960万円）

と、最近のオークションでは見られないマニアックな結果だった。

ここではフランス車も数多くが並んだ。なかでも1954年パナールX86ドロマイト（1192万円）を筆頭に1973年アルピーヌ・ルノーA110 1800グループ4ワークス・ラリーカー（4619万円）、グループBホモロゲーション・モデルの1984年シトロエン・ヴィサ1000ピステ（373万円）、1991年シトロエンBX 4TC（731万円）、1990年ルノー・シュペール5 GTターボ・アラン・オレイユ限定車（343万円）などのスポーツモデルが人気を集めていた。

また戦後混乱期に作られたドゥカティのエンジンを積む3輪乗用車の1952年ディック・トライサイクル・ドゥカティが出品され、こちらは135万円で落札されている。

アールキュリアル・レトロモビル・オークション　結果一覧

価格は落札手数を含む額。日本円への換算は、オークション開催当日の為替レートを基に計算。
NS=落札不成立。日本円価格の括弧内の金額は、主催者が発表した予想落札価格。