【詳細データテスト】ベントレー・コンチネンタルGT 高級高速クーペの傑作 本格スポーツではない

公開 : 2022.01.01 20:25  更新 : 2022.03.15 03:57

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

この部門でGTスピードが得たものは、公道上よりサーキットを走ったときのほうがわかりやすい。コース幅の広いサーキットで、走行モードをハード方向に入れ、スタビリティコントロールを弱めれば、GTスピードはこれまでのベントレーのロードカーにはなかった旋回性能を発揮する。

思い切った運転をして、初期舵角をかなり切り込んでいれば、少ないながらパワースライドにも持ち込める。ただし、振り回してみると、限界域のハンドリングは不自然で必要以上に管理されたようなフィールだ。

客観的に見れば、GTスピードの精巧なシャシーシステムが重量を制する仕事ぶりはみごとだが、主観的には走りがシャープではないと感じられる。
客観的に見れば、GTスピードの精巧なシャシーシステムが重量を制する仕事ぶりはみごとだが、主観的には走りがシャープではないと感じられる。    WILL WILLIAMS

まさしく、処理すべきイナーシャの多い2.3tのクルマそのものといった感覚で、それがうまくいっていると思える部分はあるが、本質的に俊敏で、バランスとアジャスト性を備えたスポーツカーではない。

公道では、よりシンプルな方法でスポーティな走りをもたらしているか、また、それがほかのGTより少なくとも魅力的で熱中できるものになっているか、議論の余地があるところだ。ステアリングは手応えがやや重くなり、つながり感も増している。

しかし、四輪操舵がターンインで確実に高めている路面への食いつきが、指先には感じられない。その代わり、まるで魔法のように路面を捉える。ここまで重いクルマに予想するより、ライン取りは鋭く、タイトコーナーでの挙動は遊べるものだ。とはいえ、ほかのGTカーほどには鮮烈な楽しみで魅了してくれるわけではない。

ちょっとばかり熱くドライブすると、操舵システムやディファレンシャル、スタビライザーがアペックスを捉えて、その重量を旋回させ、コンマ数秒後にはESCと協調して回転モーメントをふたたび抑え込む。修正舵はそれほど必要ない。

少なくとも客観的に見れば、すべてうまくいっている。しかし、夢中になれるような魅力的なものにはなっていない。

ベントレーの売りであるショックの吸収が、望むよりもコミュニケーション性を損ねていて、間違いなく高級車らしさが残っている。もっと荒々しく走らせても、ほかのやり方ならばそうなっていたかもしれない、寛大で、予測が効いて、気持ちよくしてくれる大柄なフーリガンのようなクルマにはならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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